【東京五輪】開幕1か月前でも開催中止を求める医療現場と保健所の〝深刻すぎる実態〟

橋本聖子会長ら主催者サイドは「安心・安全」を繰り返し強調するが…(代表撮影)

東京五輪開幕まで1か月を切っても、開催中止を求める声が後を絶たない。新型コロナウイルスは再拡大の兆候を見せており、24日には都内で新たに570人が感染。1日あたりの感染者数が前週の同じ曜日を上回るのは5日連続となった。かねて医療現場の人手不足が指摘されてきたが、感染者の対応にあたる保健所も〝限界〟を超えている。その深刻な実態とは――。

このまま祭典に突き進んでいいのか。全国労働組合総連合(全労連)や全日本民主医療機関連合会などでつくる5団体が24日に都内で会見を行い、東京五輪・パラリンピックの中止を提言。全労連の小畑雅子議長は「コロナ禍のもと、医療は今も逼迫している。本来救える命が救えない事態。感染は再び拡大の兆しを見せている」などとコメントし、医療体制の拡充を求めた。

全労連は5月の段階で「東京五輪を中止し、感染防止対策に集中するよう求める」との談話を発表。全労連の黒沢幸一事務局長は本紙の取材に「労働組合内に医療関係者が非常に多くいるし、保健所で働く人もたくさんいる。今の状況で感染がさらに拡大するような状況は絶対につくらない方がいい。五輪をやるよりも感染防止に集中した方がいい」と力説した。

かねて医師や看護師ら医療従事者の過重労働がクローズアップされてきたが、コロナ感染者が最初にコンタクトを取る保健所の職員たちも疲労困ぱいだという。黒沢事務局長は「住民からたくさん電話が掛かってくるので、深夜まで仕事しているような状況がずっと長く続いている。終電で家に帰ってからも、携帯に入院調整の電話が入る」と明かす。

その上で「医療機関を紹介する立場なのに、満杯だから紹介してあげられないこともある。患者が『苦しい』と言っているのに、フォローができない。このメンタル的な大変さは想像を超えるような状況。大阪府だと、担当していた方が患者を待たせてしまったばかりに、家で亡くなってしまったケースもある」と深刻な現状を訴えた。

大会組織委員会の橋本聖子会長(56)ら主催者サイドは「安心・安全」を繰り返し強調しているが、本当に医療現場の実情を理解していると言えるのか。東京五輪開幕まで1か月を切っても、国民の間では不安が募る一方だ。

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