【インタビュー】長崎大学病院・森内浩幸教授 ワクチン接種への不安 症状増幅の原因にも

ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で取材に応じる森内教授

 新型コロナウイルスワクチン接種をさまざまな理由でためらう人がいる。日本ワクチン学会理事を務める長崎大学病院の森内浩幸教授に注意点などを聞いた。

 -基礎疾患がある人はどうすればいいか。
 健康状態や体質に心配のある人はかかりつけ医での個別接種がいい。職場接種は(現役世代への接種)加速のためのオプションにすぎない。無理やり「職場のみんなと一緒に受けなきゃ」という考えは間違いだ。上司らに押し切られる形で接種した場合、不安を抱えたままで(明確な原因がないのに体の不調を訴える)不定愁訴(しゅうそ)が出るかもしれない。接種後、何か体に異変があると「ワクチンのせいかも」と思えてきて、その症状が増幅されてしまう。決して仮病ではなく、起こり得る反応だ。

 -重い副反応を懸念する声は根強い。
 ほとんどの理由は杞憂(きゆう)だ。ただ本人にとっては深刻な悩みなので(接種を推進する側は)それをしっかりと受け止め、きちんと説明した上で「それなら打って」と考え直してもらえるようにするのが大事。(市民が打たない)権利を主張するのはいいが、接種しないことでその人が損をすることが予想される。持病があれば、なおさら打った方がよい。しかし「怖い」という感情を無視して無理やり接種させると、不定愁訴につながることがある。「集団免疫の確立が遅れる」というような差別につながる批判は絶対に避けなければならない。

 -米ファイザー製やモデルナ製はメッセンジャーRNA(mRNA)という遺伝物質を利用している。「未知のワクチン」と警戒する人もいる。
 mRNAワクチンは、生ワクチンではないので体に入ると、あっという間に消えうせる。細胞の中にmRNAを届けて、それがコロナウイルスのスパイクタンパクの設計図としてしばらく働き、消える。何年もたってから何らかの影響を与えるという可能性を完全に否定しろと言われたら、無理だが、ありそうな話とは思わない。

 -因果関係は不明だが、接種後の死亡例が国内でも複数ある。
 副反応がゼロというワクチンは存在しないと思う。さらに、ワクチンに原因があるかは十分にデータを集めて解析しないと分からない。mRNAワクチンは相当な数が使われているが、少なくとも大人に関して、特別なことが起こっているという証拠は見つかっていない。仮にあるとしても非常に珍しいこと。デメリットよりメリットの方が勝っていると言える。

 


© 株式会社長崎新聞社