ワクチン接種券 視覚障害者分に点字なし 長崎市「合理的配慮」怠る

長崎市は公文書点字化サービスの登録者に、発送元の部署名を点字で記した封筒を送る。65歳以上に送付したワクチン接種券には、そうした配慮がなかった

 長崎市が新型コロナウイルスワクチンの接種券を65歳以上の視覚障害者へ郵送した際、封筒や接種券に点字を付けるなどの対応を怠っていたことが24日、分かった。障害者の障壁を過度に負担のない範囲で取り除く「合理的配慮」を官民に義務付けた障害者差別解消法や、県の関係条例に反する。3月には国が、接種情報の提供について障害者に配慮するよう通知を出していたが、市はこれにも対応していなかった。
 本紙情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)への投稿を端緒に、市などに取材し判明した。
 市障害福祉課によると、視覚障害者への情報提供について、市は普段から、税や水道など重要な公文書を点字に変換して送るサービスを提供。事前登録制で、点字を読めない人や同居家族の支援に頼る人らを除き、現在は市内の約50人が登録している。
 しかし市はワクチン接種券を同サービスの対象と捉えておらず、登録者のうち65歳以上の24人に対し、点字化していない通常の接種券を送った。同課の朝長聖治課長は原因を「ワクチン接種事業室との連携不足」と説明。通常は公文書を発送する部署の依頼を受け、同課が点字化するが、「今は(接種券を送る)事業室が膨大な業務に追われており、障害福祉課が気掛けて提案すべきだった」としている。国の通知は視覚障害者宛ての郵送物について、点字や拡大文字の使用を検討するよう全国の市区町村に求めていた。
 6月初旬に視覚障害者団体や関係者から指摘を受け発覚。これを受け、市は訪問や通所の介護事業所などに対し、利用者へ接種券が確実に届いているかの確認や予約代行などでの協力を求めた。今後、64歳以下の同サービス登録者に接種券を送る際は、封筒や書類に点字を付けて送る。
(三代直矢)


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