認めず…?

 〈…再び認めず〉-まるで示し合わせたように同じ見出しが各紙に並んだ。同じ姓を名乗ることを夫婦に要求している民法や戸籍法の規定が憲法に違反するかどうかが争われた家事審判を巡る一昨日の最高裁決定▲見出しがピタリと一致しているのは、より少ない文字数でこの裁判を伝えるとしたら、と突き詰めたらこうなるから…なのだが、決定に携わった裁判官たちが驚いていないか心配している▲決定のニュアンスは「認めず」という日本語から連想するほどには強くない。〈今の仕組みが憲法に違反するとは言えない〉と言っただけで、新たな仕組みを論議したり、仕組みを微修正したりする余地は否定していないのだ▲ここ数年の間に、運転免許証やパスポート、住民票などに「旧姓」が併記できるようになった。夫婦同姓の義務付けで生じる不便があると政府も認めている▲結婚当時に同じ姓を名乗っていた夫婦が離婚した場合、旧姓に戻ることなく結婚時の姓を選べる制度がある。だったら結婚の時も選択権があっていいはず-という主張には説得力がある気がする▲選択的夫婦別姓制度は導入を巡って綱引きや足踏みが続く。問われているのは結婚に伴う改姓が生む誰かの不便や違和感や喪失感に社会がどう寄り添えるか、だ。議論を止めずにいたい。(智)

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