30~50年後の「山口都市核」を市民に問いかけ  「未来都市構想」を発表 山口商工会議所

 山口商工会議所(河野康志会頭)の「山口未来構想特別委員会」(川口雄一郎委員長)による提言「山口市中心市街地 未来都市構想」が、このほど発表された。

 同委員会は、「文化、生活、歴史水準を高める、夢や希望のある『山口都市核』構想」をつくるべく、2019年4月から2020年3月まで、月に1回のワークショップを重ねた。構成メンバーは、同商議所議員と、「専門家」「民間企業」「女性」などのキーワードを軸に選ばれた一般メンバー6人。オブザーバーも参加しつつ、毎回持ち回り式で小テーマとリーダーを変えながら進められていった。

 川口委員長は「山口都市核の中央を貫くパークロードの完成(1980年)から40年が経過した。人口構造の変化や、AI(人工知能)等デジタル技術の進化など、生活者を取り巻く社会も大きく変わり、これからも変わっていくだろう。そのような中、30~50年後の多様な世代が山口を愛し、誇りを持てるような山口都市核の未来像を描いていった」と話す。

▲川口雄一郎委員長

 テーマは「一人ひとりが輝き、豊かな生活を実感できる街へ」。具体的には、次の三つのサブテーマと九つのジャンル、32の構想からなる。

にぎわい・つながる街

 まず、「街なかに人々が自然に立ち寄り、安心して集える『居場所』となる『にぎわいの拠点』が必要」だとし、一つ目のテーマを「にぎわい、つながる街~市民が安心して集い、遊び、学び、帰りたくなる街」とした。

 構想には、①にぎわいの創出と連携を=起業支援、創業促進、店舗(「まちの駅」など)の誘致▽歴史が身近に感じられる「歴史の駅」の設置▽パークロード沿いへの飲食店やアンテナショップの設置▽電気自動車やスローモビリティなど新しい2次交通整備による拠点間移動の利便性向上②街なかにオフィスを=新たな事業所の誘致▽テレワーク可能な個室、打ち合わせ等に活用できるスペースの設置▽ICT(情報通信技術)デジタルインフラの整備や、DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性向上▽大学や地元企業など、多様な人材が交流できる拠点づくり③街なかにキャンパスを=大学などのサテライトキャンパスを設置▽空き店舗を活用したチャレンジショップ事業や起業支援を通じた定住促進▽中心市街地エリアを学生に実践フィールドとして提供し、街なかぐるみで支援できる課題解決型学習の実施▽留学生や山口市在住の外国人と市民が互いに異文化交流できる事業④街なかに子どものための施設、子育てを応援する施設を=子育てがアドバンテージになる街となるよう、乳幼児と保護者のための環境の確保、構築▽幼児や小学生向けのプレーパークのような生き生きと自由に遊べる施設の設置▽中・高・大学生向けに、放課後に自由に使える勉強ができる場と、先輩や大人に進路などの相談がしやすいフリースペースの設置、が掲げられている。

歴史を伝え、感じる街

 次に「山口市には多くの歴史的な遺構と文化があり、今も生活の中に息づいている。地域に対する愛着を次世代へつなげる豊かなコミュニティーを形成するためにも、子どもたちが将来にわたって誇りを持ち、愛せる郷土の歴史・文化を大切に育む街になることが必要」だとし、「歴史を伝え、感じる街~大内文化や明治維新の歴史の魅力を生かせる街に」を二つ目のテーマとした。

 構想には、⑤歴史や文化が漂う街並みの保存や魅力あふれる歴史文化の磨き上げを=大内文化が色濃く残る街並みや、明治維新に関する文化財を、大人も子どもも親しみやすく、楽しめるものとして再構築▽大内塗などの大内文化、明治維新の歴史遺産をさらに磨き上げ、積極的に発信する体制の整備▽商店街への映画館復活を通じた、市民が新たな文化に触れる機会の創出、が挙げられた。

景観を楽しむ街

 続いて、「春夏秋冬、どの季節でも自然の魅力を存分に感じられる山口市だからこそ、身近にある道の安全性を高め、魅力を向上することで、車で移動するのではなく『歩いて暮らす街』『季節や自然を感じ、まちの景観を楽しむ、歩きたくなる街』になることが必要」だとし、「景観を楽しむ街~自然と暮らしが融合した街に」を三つ目のテーマに掲げた。

 構想には、⑥県道204号線をまたいだ動線の分断解消を=早間田交差点と市民会館前の地下通路を撤去して、横断歩道を増やしスクランブル化することで、人々の往来やにぎわいが「見える道」へ▽県道204号線を減線して歩道を広げ、マルシェなどを開催できるロードサイドを確保し、「第2のパークロード」となるように整備▽早間田交差点の周辺を公園化し、新しい市役所庁舎と一体化した空間となるように整備⑦歩く楽しさを感じる街づくりを=商店街の空き店舗にインスタ映えするシャッターアートを施し、買い物だけでなく、目で楽しめるスポットの設置▽パークロードから山口駅までを回遊できる空間へと整備し、街歩きしたくなる魅力あふれる周遊コースを提案▽標識看板や広告などを良好にデザインする景観形成▽電柱の地中化による、安全性の向上と景観整備▽商店街アーケードと駅通りが交差するところにある「魔法の屋根」を撤去し、市役所側と山口駅側にアーケードを拡張▽商店街のアーケード内をいつでも安心安全に歩けるような24時間歩行者専用道路化▽県道204号線沿いに駐車場を整備し、商店街へのアクセスを向上⑧道路環境の整備を=歩行者、ランナー、自転車のそれぞれが安全に楽しめる通行路の整備▽ランナー、サイクリスト向けのステーションの整備⑨市民会館は新本庁舎等、亀山周辺エリア全体の景観に配慮し、文化芸術都市としての都市魅力向上も見据えた整備を=市民会館を亀山周辺エリア内で移転し、亀山エリアの文化ゾーンとしての魅力向上▽現在の市民会館跡地は、新市役所のフロントエリアとなるように芝生公園化へ、が挙げられた。

提案から実現へ

 同委員会は「山口市を子ども世代、孫世代へと良い形でつなぎ、紡いでいくことを目指して提言をまとめた。50年後の山口市が、誰もが輝き、今よりさらに魅力あふれる街へと成長していることを希望する」と締めくくっている。川口委員長は「この提言が、今山口市に住む人たちが、未来について考えるきっかけになってくれたら嬉しい」と話す。構想は、ウェブサイト(https://www.yamacci.or.jp/mirai/index.html)で公開されている。

▲山口市中心市街地未来都市構想マップ

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