国際結婚家庭のバイリンガル子育て

グローバル化の進展に伴い国際結婚カップルが増えています。国際結婚家庭に育つ子どもは自然とバイリンガルになると思われがちですが、異なる文化と価値観が共存する家庭で、二つの言葉をバランス良く育てていくのは想像以上に険しい道のりです。また海外在住の国際結婚家庭では、家庭の言語環境に加えて、生活する土地の言語環境も大きく影響してきますから複雑です。

それぞれの母国語で話しかけるのが基本

子どもをバイリンガルに育てることについてパートナーとの間で理解と協力が得られれば、国際結婚家庭は理想的なバイリンガル環境を作ることができます。父親と母親がそれぞれの母国語で子どもに語りかけ、それぞれの母国語で読み聞かせることで、二つの言葉とも母国語並に発達させることができます。

「2カ国語を同時に与えると混乱しませんか?」という方がいますが、両親がそれぞれの「母国語で」「豊かに」接していれば心配ありません。よくバイリンガル環境の子どもは言葉の発達が遅いと言われますが、それは2カ国語を与えていることが原因ではなく、言葉のインプット不足によるものがほとんどです。

子どもの言葉は、豊かに言葉がインプットされるからこそ、豊かに出てくるようになります。子どもと一緒にいる時は、できるだけたくさんの言葉をかけ、たくさんの本を読み聞かせてあげてください。

親は日本語を貫き通すことが大切

海外在住の場合、幼児期にバイリンガルに育っても、その能力を学齢期以降も維持していくことが大変です。現地校に通い始めると、子どもの生活は英語中心になります。すると短期間で英語が上達する反面、日本語は停滞していきます。

子どもによっては、人前で親と日本語で会話することを恥ずかしがったり、嫌がったりするケースもあります。また親が日本語で話しかけても返ってくる言葉が「英語オンリー」になることも珍しくありません。

子どもが日本語に拒否反応を示しても、英語で返答しても、親は子どもとの会話は日本語を貫き通すことが重要です。

国際結婚&海外在住という言語環境では、親との会話が子どもの日本語を維持する最後のとりでです。ここが崩れてしまうと、子どもは自分にとって楽な英語へと流れていってしまいます。

日本語はアイデンティティー形成に影響する

一度家庭で日本語を使用しなくなった子どもが日本語を失うのは簡単です。しかし、そうなった場合の子どものアイデンティティー形成に与える損失は多大です。

両親がネーティブ並みの英語力を有している場合を除き、家庭内の親密なコミュニケーションが失われ、さらに、日本に住む祖父母や親戚、その他日本語話者からの文化継承が断絶されます。

家庭環境やパートナーの教育方針によって日本語の維持が難しい場合もあるでしょう。しかし可能ならば、子どもがアイデンティティーを確立していくティーンエージャー前後までは、親は日本語で接することを貫き、子どもの日本語力を維持してあげてください。

日本文化に興味を持つように促す

子どもの日本語を保持するには、日本文化に興味を持つように家庭環境を整えることも効果的です。日本語の本やマンガを本棚に並べておいたり、日本のアニメや子ども向けの番組を見せたり、日本の季節の行事を祝うなど、楽しみながら子どもが「日本好き」になるように導きましょう。

また、日本語が話せる友達を作ったり、日本に住む祖父母や親戚とメールやチャットを通してコミュニケーションを密にすることで、日本語や日本文化が自分にとって大切なものであることを自然と理解していきます。

船津徹 (ふなつ・とおる)

TLC for Kids代表 教育コンサルタント

1990年明治大学経営学部卒業。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。 しちだ式教材制作に従事。2001年ハワイ州ホノルルにてグローバル教育を行う学習塾TLC for Kidsを開設。 2015年にTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校開設。2017年上海校開設。 アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上のバイリンガルの子どもの教育に携わる。 イエール大学、ペンシルバニア大学など米国のトップ大学への合格者を多数輩出。 著書に「すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。」(ダイヤモンド社)、「世界で活躍する子の〈英語力〉の育て方」(大和書房)。

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