<社説>高校の生徒指導校則 自主・自律を重んじよ

 教育の場で重視されるのは児童生徒の自主性、自律性を育むことだろう。しかし現場での実態は異なるのではないか。県立高校全68校の生徒指導に関する校則を見ると疑念が生じる。 専門家に「ほかの都道府県にない異常な制度」と指摘される罰則制度は速やかに廃止すべきだ。同時に生徒を拘束するのでなく、自ら考え、自らを律する内容に変える必要がある。そのためには生徒自身が議論に参加する環境をつくることが大事だ。

 琉球新報が情報公開制度で入手した県立高校各校の校則を見ると、学校によって呼び方は違うが、校則違反を重ねるごとに「警告」のカードが出される罰則制度がある。累積によって指導・注意、訓告と強まり停学もあり得る。

 罰則をもって抑止力とするのは刑法の考え方だ。極論すれば、行動を抑制するには罰そのものがより重くなる可能性すらある。教育現場にはなじまない。教育に必要なのは、自身の行動にどのような問題があったのか、振り返る指導だ。それなくしては根本的な解決になるはずがない。

 罰則で生徒を従わせる手法は教育基本法にも反する。同法は「教育の目標」として「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養う」とうたっているからだ。

 一方、校内の学習支援室など教室以外で学ぶ「別室登校」の期間に上限を設ける校則は、生徒の学ぶ権利を侵害しかねない。

 実際は保護者、支援者と連携しつつ延長措置を図っているという。だが生徒が校則による「残り時間」を知ったとき、心理的圧力を感じないか。

 別室登校する理由はさまざまだろうが、人間関係を含め心理的な要因があることは予想できる。生徒に学ぶ意欲があるのであれば、多様な学習環境を提供するのが学校の役割といえる。そうした生徒に無用な圧力をかける校則なら即座にやめたほうがよい。

 県教育委員会が出した「不登校対策リーフレット」は別室登校の生徒には「無理のないよう時間をかけて支援を行う」と対応例を挙げている。

 このほかにも「キャンプ禁止」など形骸化した校則や「地毛証明」といった生徒の人権に配慮を欠いた校則がある。本来、憲法が保障する自由を侵害するような校則は無効である。

 生徒自身がどのような高校生活を送りたいのか。学校や古い校則に縛られることなく、自ら決めていく過程を重視する取り組みを東京のNPO法人カタリバが進めている。県内でも同様の動きが広がることを期待したい。

 生徒からは教諭によって運用が変わるという指摘もあるが、多くの教諭は生徒に寄り添い、生徒自身が変わるきっかけをつかむ指導をしていると信じる。だからこそ形骸化し、無用となった校則を見直す機運を高めるべきだ。

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