冨岡氏 不出馬表明 突然の決断に困惑広がる 後継レース本格化

 次期衆院選に長崎1区から立候補予定だった自民党衆院議員の冨岡勉が不出馬を正式表明した。突然の決断に支援者には困惑が広がる一方、後継レースは今後本格化する。急きょ有力対抗馬を見失う形になった国民民主党現職、西岡秀子の陣営は警戒を強めている。
 25日夕、長崎市の自民党県連。後任の公募方針を確認する会議の冒頭、同市議で党長崎支部幹事長の深堀義昭は冨岡への不満をぶちまけた。「支部に何の連絡もなく本人が(不出馬を)勝手に決めて遺憾。敵前逃亡だ」
 冨岡が、事前の情勢調査次第では党内規の「比例候補73歳定年制」を理由に出馬を見送る可能性に言及したのは、21日の記者会見。だがその前の陣営や医療関係者の会合でも同様の発言を繰り返していた。
 そして周囲に不出馬を告げたのが24日。前日に冨岡と話した後援会関係者は「情勢次第で、とは言っていたが、まだ不出馬は確定していないようだったのに」と困惑する。突然の決断理由は何なのか-。
 冨岡は本紙の取材に、7月4日の73歳の誕生日以前に衆院選が実施されていれば「出馬していた」と打ち明ける。たとえ小選挙区で負けても比例復活の可能性が残る。だが今後の情勢調査の結果を待ってから、後任公募を始めても、準備が間に合わないと判断。世代交代の必要性も感じていたため、誕生日を前に決断したという。さらに「私が(県都で)議席を失えば、来年の参院選(長崎選挙区)の(自民)候補にも悪影響が及ぶ」と、出馬予定の参院議員金子原二郎への配慮もにじませた。
 実は冨岡は24日、日帰りで上京し、息子と昼食を共にしている。後継の公募に手を挙げないかと促し、一定前向きな感触を得たという。だから不出馬を決めたのか。「それは違う。あくまでも世代交代が必要と判断したからだ」と否定した。

 「西岡には金子でも2万票差を付けられた。簡単には勝てない」。ある県連関係者は後任選びに頭を悩ませる。2016年の参院選長崎選挙区。再選を果たした金子は長崎市で約8万1千票を得たが、国政初挑戦だった西岡はそれを上回る約10万3千票を獲得した。冨岡も前回衆院選で西岡に約1万票差をつけられた。
 冨岡が21日の記者会見で出馬見送りの可能性に言及して以降、既に複数の後任の名前が取り沙汰されている。西岡に対抗できる女性候補、現職県議…。迎え撃つ側になった西岡陣営は警戒を強める。県内4選挙区で唯一野党が議席を死守しているのは西岡の1区のみ。関係者の1人は東京五輪後に想定される衆院選をにらみ、「五輪が盛り上がって自民に追い風が吹いても相手が冨岡なら…と思っていたのだが」と本音を漏らす。
 西岡を推薦する連合長崎の幹部は「西岡はこの4年間、働く者の声を国政に一生懸命届けてくれた。相手が誰になろうと自分たちの戦いをやるだけだ」と気を引き締めた。=敬称略=

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