宇都宮グランドホテル閉館へ 67年の歴史に幕 コロナ禍、経営継続困難に

利用客らに愛された広大な日本庭園=宇都宮市西原町(宇都宮グランドホテル提供)

 宇都宮グランドホテル(宇都宮市西原町、中村太三郎(なかむらたさぶろう)社長)は25日、経営不振により、7月31日でホテルを閉館すると発表した。コロナ禍に伴う外出自粛などのあおりで、婚礼や宴会の利用が激減したことが主要因という。ホテルの営業は終了するが、会社は存続する。国内外の要人も訪れた名門ホテルは、前身の陽南荘から続いた67年の歴史に幕を閉じる。

 同社によると、婚礼や宴会の落ち込みをカバーするため、収益確保や経費削減に注力した。テークアウト需要を狙った弁当販売や、人員整理など収支の改善を目指した。だがコロナ禍の長期化で業績回復の見通しは立たず、今期期初の昨年9月から今年5月までの売り上げは、前年同期に比べ6割程度減ったという。

 同ホテルは5月中旬から、一部施設で臨時休館している。7月1日からは予約客のみを対象に営業を続け、8月1日以降の予約については「順次連絡し、お断りせざるを得ない」(同社幹部)としている。アルバイトを含めた従業員約50人に対しては、7月末付での整理解雇を通知した。

 同社幹部は、「ホテル閉館後の事業内容は白紙」と説明した。ホテルの建物や広大な日本庭園を含む約4万平方メートルの土地については、「今の段階でお伝えできることはない」と述べるにとどめた。

 中村社長は、下野新聞社の取材に対し「ここまで継続できたのは、地域や国内外の皆さまの支援のおかげで御礼とともに、閉館を深くおわびする」と話した。また従業員の再就職に向け、同業他社を含めた幅広い企業へ協力を要請していることを明かした。

 同ホテルは1954年、陽南荘として設立された。71年には同ホテルがオープン。皇太子時代の上皇、上皇后両陛下や、同じく皇太子時代の天皇、皇后両陛下も来館された。マーガレット・サッチャー元英首相ら要人も訪れるなど、県内有数の名門ホテルとして知られる。

 一方、2016年、経営不振に伴う負債の処理のため、土地と建物を不動産業の丸井物産(宇都宮市)に売却し、経営再建に取り組んでいた。

7月末に閉館することが発表された宇都宮グランドホテル=25日午後2時25分、宇都宮市西原町

© 株式会社下野新聞社