【宮永篤史の駄菓子屋探訪1】静岡県浜松市中区「駄菓子屋みずの」自動車整備工場の一角にある駄菓子屋との偶然の出会い

全国約400軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は静岡県浜松市中区「駄菓子屋みずの」です。

通りがかりの駄菓子問屋で誰かと間違えられる

浜松といえば餃子ということで、とある餃子屋さんへ向かっていたところ、途中で偶然、駄菓子問屋を見つけました。沖縄の定食屋にあるお箸のような色の外壁が印象的な野中商店。今回の旅は今日が最終日だし、ついでに自分の店の仕入れをして帰ろうと思い、寄ってみました。

「水野さんのところの人?おつかい?」といきなり声をかけられ、なんのことかわからず、とりあえず「いや、埼玉から来たんですが・・・」と返答。それをきっかけに駄菓子屋探訪の話で盛り上がり、ありがたくも取引先のお店を数軒紹介していただきました。気になるのは、やはり会話のきっかけになった「水野さん」。この日、家に帰ることは諦めて、早速向かいます(笑)。

小学校の門の向かいにある好立地の店

JR浜松駅の南口から南西へ700mほどのところにある、双葉小学校。その向かいに「水野自動車工業」という整備工場があり、一部が駄菓子屋になっていました。小学校の門の向かいは、駄菓子屋界では最高峰の好立地。子どもたちがお店と校庭を行ったり来たりしながら、楽しそうに遊んでいます。

店内は動線がロの字に取られた長方形で、棚にはたくさんの駄菓子が。よしずなどの装飾品がなんとなく夏を想起させる内装は、白い壁も相まって爽やかな雰囲気です。特徴的なのはカウンターがないことで、会計時は店主が座るベンチがテーブル代わり。限られたスペースに少しでも多くの駄菓子が置けるように、あえてこうしているとのことでした。

駄菓子屋みずのは平成2年(1990年)ごろ、自動車整備工場を営むご主人と、専業主婦だった奥さんの2人で創業。この日応対してくださったのは奥さんで、駄菓子屋を始めたのはご主人の体調がきっかけだったそうです。

「いろんな人が来て飽きがこない」

「主人が体調不良になって、自動車整備の仕事を最前線で続けるのは難しいんじゃないかってなったんですよ。だからといって、じっとしててもしょうがない。目の前が小学校だし、お店を作ってお客さんと話をしたり、軽い作業をすればリハビリ代わりになるんじゃないかと思って、物置だった場所をリフォームして駄菓子屋にしました」

「いつの間にか30年たってしまったけど、店に来る子たちは元気だし、いろんな人が来て飽きがこない、楽しい商売ですよ。儲けは出ないですけど(笑)。自分の子どもたちは仕事の都合で東京やアメリカに行ってしまっているんですけど、孫たちがここに来るのを楽しみにしてくれているので、私も歳はとりましたが、長く守っていきたいですね」

常に混雑していましたが、ゆったりとしたリズムで、誰とでも楽しそうに話す奥さん。子どもたちはそんな奥さんとの会話も楽しみのひとつにしているようで、お店の繁盛が立地によるものだけではないことを感じました。駄菓子の仕入れを工場の整備士の方に頼むことがあるそうで、野中商店で「水野さんのおつかい?」と聞かれたのはそういう理由からだったようです。見た目が駄菓子屋らしからぬことで不都合も多い自分ですが、今回はそれが初めて役に立ち(笑)、素敵なお店に巡り合うことができました。

駄菓子屋みずの

住所:静岡県浜松市中区海老塚2-7-2

電話:053-452-6227(水野自動車工業)

営業時間:14:00〜17:00

定休日:日曜・祝祭日

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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