長崎県内初認定「ドローンスクール」 教員らが「教官」資格取得 北松農高と「田平まちづくり協議会」

ドローン操縦の基本を学ぶ生徒ら=平戸市田平町

 長崎県平戸市田平町の県立北松農業高(田上和利校長)と地元の市民団体「田平まちづくり協議会」(松瀬郡一郎会長)が、同校の生徒を対象に実施する課外活動「ドローンスクール」が本年度、国土交通省のドローン講習団体の認定を受けた。公立高校の認定は全国で3校目、県内では私立も含め初めて。
 同団体に登録されると、主催する講習の修了者に「認定証」を交付したりして、専門的な人材育成を図ることができるようになる。「ドローンの技術はさまざまな業界で生かすことができ、生徒たちの進路選択の一助になる」と同校担当者は効果を説明する。
 同校は2017年度から同協議会と連携。農林水産省の「農業用ドローン普及計画」に基づきドローン操縦を教育活動に取り入れてきた。20年度、教員2人と同協議会のスタッフが国交省が認定するドローン講習の「教官」資格を取得。講習体制などを整え、今年4月1日付で認定講習団体に登録された。
 同協議会は17年に発足。地域振興にドローンを生かそうと、スマート農業導入の一環としてドローンを使って田畑への農薬・除草剤散布を請け負ったりしている。
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 航空法は、空港周辺や人口集中地区上空などドローンの飛行禁止区域を定めており、人や建物からの距離30メートル未満や目視できる範囲外での飛行などが禁止される。講習を受講し認定証の交付を受ければ、規制空域での飛行などについて国交省に許可・承認を申請することができる。
 北松農業高のドローンスクールでは「教官」の指導の下、生徒16人が航空法、電波法、気象学などの学科と操縦の基礎を学習。本年度末に予定する認定試験合格を目指す。ドローン操縦士養成などを手掛ける佐世保市江迎町の企業「フライトパイロット」が講習管理団体として協力。ドローンに関する最新情報やスマート農業での活用などの情報を提供する。
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 農業者にとって、ドローンを駆使したスマート農業は高齢化や労働力不足を補う存在となりつつある。
 平戸市の農業収益がある農業経営者数は約1600人(15年農林業センサス)。うち65歳以上は約830人で高齢化率は52%。田平町内で約35アールの水田を耕作する男性(70)は「農薬や除草剤散布は1回3時間近く掛かる。足元が不安定になって、散布機を背負ったまま転倒したこともある」と作業の大変さを訴える。昨年から同協議会にドローンによる空中散布を依頼。「本当に助かる。これなら、まだ稲作を続けられると感じる」と男性は歓迎する。
 5月上旬、北松農業高で開講式があり、生徒たちが操縦を体験。教官でもある同協議会の前田洋志事務局長らの指導を受けながら教室内で代わる代わるドローンを飛ばした。生物生産科1年の田中清那(せな)さん(16)は「農業をやっている祖父の仕事を手伝いたい」と目標を語る。
 教官の資格を取得した濱野一郎教諭は「ドローン技術を活用した進路の一つとして、できれば就農してほしい。最後まで応援したい」と話している。

実習用水田でのドローンによる農薬散布を見学する生徒=2020年6月、平戸市田平町

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