8ゲーム差→3.5ゲーム差 巨人が猛追、専門家は「阪神にとって不安となる可能性」

巨人・梶谷隆幸、丸佳浩、坂本勇人(左から)【写真:荒川祐史】

最近13年間直接対決負け越しなしの実績が最終的に影響を与える?

巨人は26日、敵地・神宮球場で行われたヤクルト戦に10-3で大勝し、5連勝を飾った。一方、首位の阪神は本拠地・甲子園球場でDeNAに敗れた。18日時点で今季最大の8ゲーム差が開いていた阪神と巨人だったが、一気に3.5ゲーム差に。このまま猛虎をとらえるのか――。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(DeNA)で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析した。

この日、巨人打線はあっという間にヤクルトのエース・小川を攻略した。初回こそ2死一、三塁のチャンスを生かせなかったが、2点を追う2回には、先頭の梶谷から北村、大城の3連続短長打で同点に。3回には、先頭・丸がシフトの逆を突く三塁線へのバント安打で出塁したのを皮切りに、坂本が中前適時打、北村が2号3ランを浴びせKOした。

頼れる顔ぶれが揃ってきた。極度の打撃不振で2軍落ちしていた丸は、今月18日の1軍復帰から3番に座り、直近8試合で打率5割(24打数12安打)、4本塁打10打点の猛打を振るっている。この日は、4回無死二塁で相手2番手の左腕・坂本からセンターオーバーの適時二塁打を放つなど、3打数2安打2打点1犠飛の活躍だった。

野口氏は「真ん中高めの速球を、バットのヘッドを立てて一閃した適時二塁打は、広島時代に一番調子の良かった頃の丸そのもの」と称賛。“捕手目線”で「2軍落ち前は、打席でいかにも自信がなさそうな表情をしていましたが、今は余裕を漂わせている。シフトの逆を突くバント安打も、余裕があるからこそ生まれた発想です。状態が悪い時にあれをやっても、次の打席にはつながりませんから」と指摘した。

右手親指末節骨骨折で離脱していたキャプテン・坂本は、11日の復帰以降5番を打ち、10試合で打率.229(35打数8安打)。左太もも裏に違和感を訴えていた梶谷も、22日に復帰して6番に定着。4試合で打率.267(15打数4安打)。数字はともかく、いずれも存在感は格別だ。

巨人打線の鍵は「どうやって岡本和真に打たせるか」

野口氏は「丸、坂本、梶谷の復帰で、4番の岡本和が気楽に打てるようになったことが1番大きい」と見る。確かに、今季全71試合で4番を務めている岡本和は、主力の相次ぐ離脱で重圧を一身に背負い、悪戦苦闘してきた。しかし、いまや3番・丸と5番・坂本に挟まれ、さらに6番に梶谷が控えているためマークが分散され、相乗効果が生まれている。岡本和は坂本復帰後の10試合で、打率.257(35打数9安打)はともかく、4本塁打14打点を稼ぎチームを勝利に導いている。

「私は今季の巨人打線の鍵は、『どうやって岡本和に打たせるか』にあると見ています。現状は、前を打つ1番・松原、2番・ウィーラー、3番・丸が塁上を賑わし、しかも5番に坂本がいるから、相手投手は岡本和と勝負せざるをえない。さらに6番に梶谷がいるから、坂本とも勝負しなければならない──という良い流れができています」と野口氏は解説する。

野口氏は「いつ、どのチームの誰が新型コロナウイルスに感染して離脱するかわからない状況で、各チームとも故障者も多い。残り半分のペナントレースの展開を予想するのは難しい」とした上で、巨人と阪神の優勝争いに関しては、最近の両チームの対戦成績が影響を与える可能性があると見ている。

今のところ、巨人と阪神の今季対戦成績は6勝6敗の五分だが、2008年以降最近13年間は巨人が負け越しなし(五分が3シーズン)で、昨季も16勝8敗の“ダブルスコア”だった。阪神に黄金ルーキーの佐藤輝が加入するなど、顔ぶれに多少変化があるとはいえ、「相性がここ1番で、巨人にとって自信、阪神にとって不安となる可能性がある」と野口氏。いずれにせよ、猛虎に引き離される一方に見えた今季の巨人が、「勝てる態勢」を整えつつあることは間違いない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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