雨にぬれても

 曇り空から雨が落ちてきたが、あいにく傘がない。そんなこともある梅雨の時季、つい口ずさみたくなるのが洋楽ポップスの名曲「雨にぬれても」▲アメリカン・ニューシネマの傑作「明日に向って撃て!」(1969年)の挿入歌で、70年に全米1位を獲得。曲はバート・バカラックさん、詩は故ハル・デービッドさんが手掛けた。あまたのヒット曲を世に送った名コンビだ▲〈雨粒が降り続けるのさ/おれの頭の上に〉。B・J・トーマスさんの叙情的な歌声が、ほのぼのした曲調にぴったりだ。先月、78歳で亡くなり、5月31日付の本紙社会面に小さく訃報が載っていた▲〈憂鬱(ゆううつ)なことがあっても/おれは絶対に負けない〉〈泣き言を言ったって雨はやまないから〉〈あと少しだよ/幸せがやって来るのは〉〈おれは自由さ/何も心配ない〉▲この歌が愛され続ける理由の一つは、聞く者を励ます前向きな歌詞だろう。コロナ禍の今、とりわけ心に響く。作家の村上春樹さんも落ち込んだときに聞くという▲統計上2番目に早い5月15日に到来した今年の梅雨。しばらく好天の中休みが続いたが、これからが「本番」か。濡れながら鼻歌交じりで歩ける優しい雨ならいいが、このところ毎年のように襲ってくる梅雨末期のザアザア大雨はごめんこうむりたい。(潤)

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