【マーティ&島倉りか 昭和ソングって素敵じゃん】米国ではNG!歪んだギター音が日本で受け入れられる理由

対談に昭和アイドルのレコードも持参した島倉(左)とマーティ

世界的に有名なギタリスト、マーティ・フリードマンが、平成生まれのアイドルと昭和の歌を語る連載。昭和歌謡好きで知られるBEYOOOOONDSの島倉りか(20)と、中森明菜の「少女A」を聴いたマーティ。日本のアイドルソングに抱いていた思いがあふれ出し、ある持論を展開!

【チェッカーズと中森明菜と芹澤廣明氏~アイドル曲のギター論】

――チェッカーズ初期のヒット曲を手掛けた作曲家・芹澤廣明氏は、中森明菜がブレークした大ヒット曲も手掛けています。中森明菜の曲は聴いたことありますか

島倉 よく聴いてます。

マーティ 彼女が(松田)聖子ちゃんの「瑠璃色の地球」をカバーした歌が大好きですよ。聴いて感動しました。とてもすてきで、聖子ちゃんの本人バージョンより若干好きです。

――聖子バージョンは1986年(昭和61年)、明菜バージョンは2002年(平成14年)発表です。なお聖子さんのデビューは79年、明菜さんは数々の人気アイドルを生んだ「花の82年組」のひとりです

島倉 聖子さんと明菜さんって、昭和のころはライバル的な存在で、競い合うようにヒット曲を出してたんですよね。

マーティ「瑠璃色――」を初めて聴いた時は、まだ日本のことをよく知らなかったから、ライバルだと知りませんでした。ライバルの曲をカバーして、感動的な歌にするのは本当に素晴らしいです。

――明菜さんがブレークしたきっかけは、大ヒットした2枚目のシングル「少女A」(82年)。その作曲者が芹澤さんです。聴いてみましょう

マーティ この曲、とても日本っぽいです。なぜかというと、最初から20秒以上ギターソロじゃん。ソロ歌手の曲でこんなにギターの存在感があるのは日本だけです。向こう(米国)ではあり得ないです。

――実は芹澤さんはもともとギタリストです。作曲家になる前はスタジオミュージシャンとして活躍していました

島倉 あ、このイントロにはそういう背景もあるんですね。

マーティ この曲もそうだし、アイドル曲でもよくギターソロが入るじゃないですか。海外の人に「なんで日本の曲はギターの存在感がこんなにあるの?」ってすごく聞かれるんですよ。それにこの曲、ギターの音が歪(ひず)んでるじゃん。これ、アメリカ人として不思議でしょうがないですよ。

島倉 そうなんですか?

マーティ 向こうはアイドルの曲に歪んだ音は絶対に入っていません。歪んだ音はハードロックとメタル専門。向こうでは歪んだギターの音はノイズだと思われているんです。残念ですけど。

島倉 日本ではなぜ受け入れられているんでしょう?

マーティ これは持論だけど、日本には昔から三味線があったじゃないですか。三味線って歪んだ音が出るんです。歪んだギターの音がアイドルの歌に入ってもおかしいと思われないのは、三味線を通してそういう音に慣れていたからだと思います。遺伝子に刻まれているのかもしれない。おばあさんでもアイアン・メイデンみたいなギターの音に対応できるのは、日本ならではです。

――リアルタイムで気にせず聴いていましたが、「少女A」のイントロからそんな日本の特性が読み解けるとは! 島倉さん、「チェッカーズ論1」からのお話、いかがでしたか

島倉 チェッカーズの自作曲がアメリカの80年代の曲の影響をすごく受けているというお話だったんですが、自作シングル路線になる直前の曲が「Song for U.S.A.」(86年)というアメリカへの憧れを歌った作品なんです。

――作詞・売野雅勇&作曲・芹澤廣明コンビがチェッカーズに提供した最後のシングルです。マーティさんは芹澤さんの曲から“日本”を感じていましたが、芹澤さんは実は洋楽が大好きで、米国に憧れていました。その思いを売野さんが詞にしたそうです

島倉 そのころの日本人がアメリカに憧れていたことが、歌詞からも曲への影響からもわかるって、後から聴く私たちにはとても興味深いです。歌が時代を包んで今に届けてくれてますね。

☆マーティ・フリードマン 米国・ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮華」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。

☆しまくら・りか 2000年8月20日生まれ。東京都出身。19年にBEYOOOOONDSとしてデビュー。ユニットCHICA#TETSUのメンバー。最新シングルはオリコン初登場1位の「激辛LOVE/Now Now Ningen/こんなハズジャナカッター!」。ハロー!プロジェクト2021春公演は「チーム花」で参加。

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