日本酒の新ブランド「AFURI」をリリース 伊勢原の吉川醸造、世界を視野

吉川醸造の新ブランド「雨降(AFURI)」を手にする杜氏の水野雅則さん=伊勢原市神戸

 伊勢原市神戸の吉川醸造が日本酒の新ブランド「雨降(あふり)(AFURI)」をリリースした。酒類の多様化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響で日本酒需要が低迷する中、親しみやすい味わいを追求し、世界を視野に購買ターゲットを広げる狙いがある。

 「雨降」は、地元の名峰・大山から湧き出るミネラル豊富な伏流水を使用。大山の別名「雨降山」から命名した。ラベルの揮毫(きごう)は酒造の神をまつり、酒造りと縁の深い大山阿夫利神社の神職に依頼した。

 長引くコロナ禍で、飲酒の機会が減少し、酒類の多様化で競合も激化。日本酒の国内出荷が減少する厳しい状況の中、なぜ今、新ブランドか-。杜氏(とうじ)の水野雅則さん(43)は「時代や飲み手を意識した酒造りを志向した結果」と話す。

 同社は1912(大正元)年創業の老舗。酒造りに欠かせない麹(こうじ)の仕込みや管理で、創業以来「蓋麹(ふたこうじ)法」と呼ばれる手法を継承し、「菊勇」の銘柄を中心に支持を集めてきた。

 一方で、ニーズの変化を敏感にとらえ、世界も視野に顧客層を広げるチャレンジの必要性を水野さんは痛感していた。

 同社が昨年10月、不動産業を手掛けるシマダグループの傘下に入ったことも転機になった。異業種出身で吉川醸造のトップに就いた合頭義理(ごうとうのりみち)社長(48)も水野さんと同様の課題認識を持っていた。

 これまでの伝統、強みを引き継ぐ一方で、これまで酒と縁遠かった人も飲みたくなるような商品が作れないか-。昨秋から新ブランド構想が動きはじめた。

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