「おれがやる」デ・ニーロものまね芸人が佐野でハマった“地域おこし”

お笑い芸人で地域おこし協力隊のテルさん

 「サノニイルヨ」を合言葉に佐野市地域おこし協力隊として活躍するお笑い芸人のテルさん(51)がこの秋、任期を迎える。自作のイラストや曲づくりなどを通して、市への移住定住促進に取り組んだ2年半への思いや今後の展望を聞いた。

 佐野ブランド大使を務めるロック歌手のダイアモンド✡ユカイさんが同じ芸能事務所に所属していた縁で、2018年に協力隊に就任した。「マネージャーから、市が暇なお笑い芸人を探していると聞き、みんなの耳に入る前におれがやると言った」と笑う。

 得意のイラストやイベント出演などで貢献。市に寄せられる移住定住の相談件数は就任前に比べ倍に増えている。さらに、19年の台風19号が転機に。ステージ上などだけでなく市民とじかに接するようになった。

 「現状を知ってぼうぜんとした。まず手伝おう。復旧後に笑いを届けなければ」。中山間地域の道路で泥かきなどの復旧作業を行い、会員制交流サイト(SNS)で現地の状況を発信し続けた。「SNSを見て集まってくれる人も多く、地域の人との仲も深まった」

 就任前からSNSは1日最低1回更新することを決めていたが、新型コロナウイルス禍でイベントなどが中止になった分、SNSでの魅力発信が活動の中心になった。

 「佐野のおいしいものを意味する『サノウマ』という言葉もつくった。毎日アンテナを張って探し回っているので、地元の人より佐野に詳しいかも」と自慢げに話す。活動を通じて顔が広く知れ渡り、外で声を掛けられる機会も増えた。

 任期終了後は、市内でイベント企画やグッズ販売などを行う会社を立ち上げようと計画中。「出身地だったっけ、って思うくらい佐野が好き。東京に近いし、佐野らーめんや佐野黒から揚げなどのグルメもおいしい。移住してから太ってしまい、ダイエットに苦労した」とおどける。

 「まだ何もできていない」というもどかしさも感じているというテルさん。これからも「サノニイルヨ」と発信していく。

 【プロフィル】テル 1969年、愛媛県生まれ。本名菊池輝一(きくちてるいち)。サンミュージックプロダクションに所属し、俳優ロバート・デ・ニーロなどの物まねで人気を博す。市地域おこし協力隊としての任期は2018年12月~21年11月。

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