【島人の目】サッカー欧州杯に見る東京五輪

 欧州は4年に一度、夏季五輪と同じ年に開かれるサッカーの欧州選手権で盛り上がっている。2020年大会が東京五輪同様にコロナで1年延期された。コロナ危機はいまだ収束していない。だがことし開催してもワクチンの普及等で感染拡大は抑えられると見こした。
 欧州は昨年、イタリアをはじめ死者数が最も多くなった英国に至るまで、コロナの猛威に苦しんだ。とてもサッカー大会どころではなかった。だがその後はワクチン政策を成功させた。
 EU(欧州連合)は共同でワクチンを購入し各国に分配。またEUを離脱した英国は、素早くワクチン確保に動いて大きな成果を上げた。結果、欧州ではコロナ禍の収束が視野に入るまでになった。変異株の存在もあり欧州杯以降の感染拡大の懸念は払拭(ふっしょく)されていない。だが少なくとも大会半ばのここまでは、目立った問題も起きてない。
 一方、間もなく始まる東京五輪の最大の課題は、やはりワクチン接種の遅れだろう。また欧州選手権が、英国と欧州大陸の11カ国11の都市に分散し日にちを変えて開催されるのに対し、五輪はほぼ東京一極集中で毎日のように競技が行われる。つまり密が避けられない。
 欧州選手権では客数も制限され、入場者はワクチンの接種証明書や過去の感染証明、または72時間以内のPCR陰性証明書の提示など、厳しいチェックがある。
 観客を1万人まで入れて開催するという東京五輪では、それよりもさらに厳格な感染防止策が取られるのだろう。それでも不安は尽きない。リスクを回避するには「無観客での開催」が妥当ではないか、とこの期に及んでも思う。
(仲宗根雅則、イタリア在、TVディレクター)

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