五島産トマトのスイーツ完成 パティシエ・畑中さん「地域に貢献したい」

「五島の魅力を伝えたい」と語る畑中さん(右)と、トマトを提供した野口とまとの野口沙織さん=五島市、観光ビルはたなか

 長崎県五島市中央町の「観光ビルはたなか」専務でパティシエの畑中隆仁さん(28)が、市内の農家が栽培する高糖度のトマトを使ったスイーツを完成させ、今月から販売を始めた。地元の食材にこだわった商品づくりを通し「ふるさと五島の魅力を発信する」と語る。
 畑中さんは銘菓「治安孝行(ちゃんここ)」などを製造販売する同社4代目。小学生の時、地元商店街でシャッターが下りたままの店が増え、地域が疲弊していくことに、子どもながらに危機感が募ったという。

畑中さんの卒業文集

市立福江小の卒業文集には「世界に名前が知られるパティシエになり、店を継ぐ。僕のケーキをきっかけに素晴らしい五島を世界に知ってもらう」「いろいろな国の大統領や偉い人をいっぱい呼んで有名な観光地にする」と将来の夢をつづった。
 県立五島高卒業後、東京の専門学校を経て、洋菓子店で修業を積み、昨年9月に帰郷。地元にこだわって食材を探す中、中学時代の恩師が「おいしいトマトを作っている」と同市富江町の野口とまと(野口順平代表)を教えてくれた。
 野口とまとは、酸味が少なく甘い中玉品種「フルティカ」などを栽培。こまめな水分管理の徹底や肥料の調整などにこだわり、甘くて皮が薄く肉厚なトマトを育て、地元スーパーに販売。インターネット販売では関東や関西など約2千件の顧客を持つ。
 4月からコラボ商品を企画し、甘みを生かすためにスイーツづくりを発案。ただ「トマトのスイーツは食べたことも見たこともなく、自身の引き出しがなくて苦戦した」。素材本来の味や色、程よい食感を出すため、調味料の配分を微妙に変えながら試作を繰り返した。

畑中さんが開発したトマトのスイーツ=五島市、観光ビルはたなか

 試行錯誤の末、ピューレ状のムースやジャムなどを重ね、上に果肉のようなゼリー、クッキーを乗せた4層のケーキが完成。食べた人から「トマトのさっぱりさと、甘みもあっていろいろな味や食感が楽しめる」と好評という。観光ビル内の本店と福江シティモール店(吉久木町)で販売。360円。
 野口とまとの野口沙織さん(34)は「ヘルシーで夏に合うスイーツに仕上げてもらった。トマトが苦手な人にも食べてもらえると思う」と話した。
 「試作で協力してもらいながら、仕上げることができた。素材の良さ、風味を感じてもらえればうれしい」と振り返る畑中さん。自然豊かで魅力ある食材が豊富な五島。「パティシエとしてまだまだ経験が浅い。食べた人が五島に来たいと思ってもらえるよう腕を磨き、微力ながら地域に貢献していきたい」と語った。

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