昇格へカターレ変貌 J3今季12試合終えて4位 好調維持 発信を強化

全員が献身的に戦うサッカーで好調を維持する=5月16日沼津戦、県総合運動公園陸上競技場

 サッカーJ2リーグ復帰を目指し、J3カターレ富山が変貌を遂げつつある。今季は一貫して昇格をうかがう好位置をキープしており、新社長の下、地道な試合告知や経営情報の開示など例年以上の情報発信に注力。「地域に愛されるクラブ」に向け、ひた走っている。(南貴大)

 今季のJ3は新型コロナウイルスの影響で参加チームが減った。15チームの2回総当たり全28試合で、昨季より6戦少ない短期決戦だ。富山は12試合を終えて6勝4分け2敗の勝ち点22。首位岐阜よりも1試合消化が少ないが、勝ち点3差の4位につける。

 新しい石崎信弘監督の下、全員が攻守に献身的に戦うサッカーを展開。開幕後は守備陣も積極的に前線に出る迫力ある攻撃で、順調に白星を重ねた。「富山対策」を練られてきたためか、次第に苦戦することも増えてきた。

 指揮官の交代や戦力の入れ替えなどを経た新チームとして、これまでの成績は上々。石崎監督は「少しずつやりたいことができるようになってきたが、まだまだ」と基盤強化に余念がなく、どんな相手にも実力を発揮できるチームを目指している。

 選手たちの好調さに呼応するように、フロントの姿勢も変わり始めた。左伴繁雄社長が4月の就任時に「クラブと地域の間に大きな距離を感じた」と痛感した課題を解消するべく、情報発信力の強化に着手。クラブの存在を知ってもらい、理念にも共感してもらうため、SNS(会員制交流サイト)の更新頻度を上げ、路上で試合の告知をするつじ立ち活動も始めた。

 スポンサーとの契約や四半期ごとの経営状況など、過去にあまり出してこなかった情報も公開。企業としての透明性アップを進めている。

 いずれも「カターレ愛」の醸成が狙い。サポーター歴10年の富山市の40代女性は「今まではどこか秘密主義な印象があったけど、今年は違う。いろんな情報に触れられ、親しみを感じる」と話す。

 新しい活動は成果につながり始めたようで、4月25日のホーム戦はコロナ下で最多の3145人が観戦。6月13日の試合には4000人弱が来場するなど、平均3500人を集めていたJ2時代の雰囲気を取り戻しつつある。

 在籍7年目で古参の椎名伸志選手は「フロントの動きや思いを目にすることが増え、一緒に歩めていると感じる。選手として期待に応えたい」と決意を新たにする。選手とスタッフの間で生まれた好循環が、7季ぶりのJ2復帰を後押ししてくれそうだ。

試合日程を告知するつじ立ち活動は、SNSでも話題を呼んだ=22日、富山市内

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