感染の勢い止まらぬ佐世保 医師「長引けば難しい局面」 第5波への備えに影響も

「第4波が長引けば医療現場はさらに難しい対応を迫られる」と指摘する福田医師=佐世保市平瀬町、市総合医療センター

 長崎県全体で新型コロナウイルスの「第4波」が落ち着きつつある中、佐世保市では感染の勢いが止まらない。県は感染の広がりを5段階で示す独自の基準で、同市のみ「ステージ3(警戒警報)」を継続。佐世保県北医療圏の中核を担う同市総合医療センターで新型コロナの対策本部長を務め、現場の最前線に立つ福田雄一医師(45)は、第5波の襲来を見据え、「現状が長引けば難しい局面に入る」と危惧する。
 佐世保市では6月に第4波が本格化。5日に20人の陽性者を発表した。その後も長崎市を上回るペースで発生が続いており、「常に感染経路不明の患者がいる。収束の兆しは見えない」と指摘する。
 重症患者を受け入れる同医療センターの現場では緊張状態が続く。第4波の重症者は2人と公表しているが、「これは国が定義する重症者の数字で、“実際の重症者”は数字以上に多い」。重度の低酸素状態の患者に「高流量式鼻カニュラ」という機器を用いた事例も6件あり、冬場に猛威をふるった第3波に近い水準にある。
 高齢者の入院は減少しており、ワクチン接種の効果は実感する。ただ、「接種後に感染したケースは市内でも複数例あり、そこから未接種の人々へウイルスが拡散する危険性は残る。当面は接種者も予防対策を続けてほしい」と要望。高齢者に代わり40~60代の入院割合も増加している。
 長崎市では5月に1日当たりの感染者数が過去最多55人に上るなど大きな波が押し寄せた。長崎大学病院や県などと連携し、佐世保市の医療機関も患者を受け入れ、県全体で難局を乗り越えた。長崎では警戒感が一気に高まり、収束に向かっている。佐世保市では爆発的な発生はないが、感染者数は着実に積み上がっており、「長崎に比べ感染の山が低いので、(市民に)『大丈夫』という感覚がないだろうか」と懸念する。
 世界で変異株のインド(デルタ)株が出現し、「第5波が来る可能性は高い」。県内では長崎から波を受け、その後、佐世保で広がる傾向がある。しかし、「次は佐世保から始まっても不思議ではない」。他県から流入したインフルエンザウイルスが佐世保で先に流行した事例を挙げ、「このままでは第5波に備える時間をつくれない恐れがある。ウイルスの感染力が強くなれば医療現場はさらに難しい対応を迫られる」と危機感を募らせる。
 今後、夏休みに入り、お盆や東京五輪などで県境をまたぐ人の流れが再開する。マスクの着用や消毒、3密(密閉、密集、密接)の回避など基本的な対策の徹底のほか、「ワクチンで重症化を防げる可能性がある。肥満や糖尿病、高血圧などの基礎疾患がある人はできるだけ早く接種を受けてほしい」と呼び掛ける。

 


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