「アウティング」意味知らない県民が9割 行為については半数が問題視

性的少数者に関する用語の認知割合

 性的指向や性自認を暴露する「アウティング」という言葉の意味を理解していない県民が約9割に上ることが27日までに、栃木県の「人権に関する県民意識調査」で分かった。一方、アウティングに相当する行為について人権上問題だとする回答は約半数で、県民への理解浸透は道半ばといえそうだ。アウティングは性的少数者の生き方や命を脅かしかねない行為で、県内でも被害が報告されている。支援者らは「言葉や行為の重大さを知ることで人を守れる」と学校や職場などでの周知を求めている。

 調査は県が今年1月、18歳以上の県民3千人を対象に行い、1666人から回答を得た。性的少数者を巡る質問群で、アウティングのほか、性的指向などを自ら明かす「カミングアウト」、レズビアンやゲイなど性的少数者の一部を指す「LGBT」の認知度を尋ねた。

 「意味を知っている」はカミングアウトが61.8%、LGBTが48%。アウティングは9.3%と極端に低く、「知らない」「わからない」は計86.8%だった。

 一方、アウティングに当たる「性的指向や性自認について本人に無断で伝えられること」が問題であるかと尋ねたところ、48.4%が問題だと回答。意識としては一定程度、浸透していることが示唆された。

 県内の性的少数者や家族らでつくる支援団体「S-PEC(エスペック)」の代表を務める女性によると、アウティングは県内でも身近な問題だ。

 公立中では担任教諭によるアウティングで、生徒が通学できなくなるケースがあった。教諭は連絡事項として、校長らに悪気なく報告していたという。

 職場で被害に遭う場合もある。「自殺未遂をした20、30代の社会人の当事者は少なくない」と女性。「アウティングは人権問題。授業や職場でもっと取り上げられるべきだ」と訴えた。

 性的少数者について勉強会などを開いている宇都宮大のサークル「にじみや」の学生らは、企業や学校の管理職など「影響力がある人たちにこそ理解してほしい」と期待する。「カミングアウトをする時の思いは複雑。言葉の背景にある当事者の生き方も想像してもらいたい」と呼び掛けた。

 【ズーム】アウティング 性的指向や性自認を本人の許可無く第三者などに話す行為。2015年、東京都国立市の一橋大法科大学院の学生が、同級生に同性愛を暴露された後、校舎から転落死したことを機に社会問題化した。国は女性活躍・ハラスメント規制法の指針でアウティングを「パワハラ」と規定し、大企業などに対策を義務化した。同市や三重県などはアウティングを禁止する条例を制定している。

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