『まちの学食』開始から1年 利用学生がボランティアで恩返し 佐世保

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今後の活動について意見交換する山田さん(右端)らメンバー=佐世保市、県立大佐世保校

 新型コロナウイルスの影響でアルバイトが減少するなどし困窮する学生に、長崎県佐世保市の飲食店が無料で食事を提供する「佐世保まちの学食」は開始から今月で1年を迎えた。社会人が始めた活動だが、現在は学生たちが運営の中枢を担い、「ボランティア」という形で地域への恩返し、貢献しようと模索を続けている。
 6月上旬の昼下がり。「ワクチンの(接種)予約代行の依頼が来てるんだけど、どうかな?」「自分は行きたいです!」「僕は授業が入ってて…」。県立大佐世保校(川下町)の一室では、運営メンバー5人による定期ミーティングが開かれていた。計画の進捗(しんちょく)を報告したり、新たなアイデアを各人が提案したりする。会議をリードするのは同大4年の山田彩華さん(21)。「あくまでお手伝い。授業との兼ね合いもあるだろうから、無理はしないでね」。地域と学生のため、無理をせず自分たちのできることで貢献する-。それがモットーだ。
 「まちの学食」は西海みずき信用組合(同市)など地元企業でつくる佐世保新型コロナ対策支援協議会(SCC)が始めた。10の飲食店が参加し、大学、短大、高専、専門学校生を対象に、無料で食事を提供、費用は市民や企業からの寄付で賄っている。事前登録し、店舗で学生証とスマートフォンの専用アプリを提示すれば利用できる仕組みになっている。累計の提供数は6月21日時点で2806食に上っている。
 当初の運営はSCCの西信好真さん(40)ら社会人が主導していたが、活動を知った学生が昨年秋から運営に参加。今春には新メンバー加入にも力を入れ、現在は1~4年生の男女計9人が活動する。山田さんたちが注力するのは「まちの学食」で支援を受けた学生たちがボランティアで地域に還元する仕組みづくりだ。
 ボランティアの内容は、西信さんや学生自身の人脈を基に発案。「まちの学食」の利用者を中心に、佐世保市内の子ども食堂の補助や東彼東彼杵町で茶農家の植樹などを実施した。しかし新メンバーを勧誘する際「(まちの学食を)利用していなくてもボランティア自体に興味がある」という学生の声を聞き、広く募集することにした。夏には大学近くの公民館で、近隣の中学生の宿題を手伝う活動を計画。準備を進めている。
 中心になって活動している山田さんだが、就職活動の時期と重なり、悩んだこともあった。山田さんは、かねて志望していたブライダル業界に挑んだものの、コロナ禍の影響で採用が縮小。思うような結果が出ない日々が続いた。「自分のことに集中したい。そう思う時期も正直ありました」
 そんな山田さんを救ったのも「まちの学食」の活動だった。メンバーや地域の人々と話し合い、アイデアを出し合う。時には進路に対するアドバイスももらった。視野が狭まることなく、刺激も受ける。何より一人でふさぎ込まないで済む環境だ。「最初は『困っている人のため』という思いが原動力だった。けれど今は地域と接すること自体が楽しい」と山田さんは笑う。
 この数カ月間、「地域の大人」として接してきた西信さん。「新入生も入り、継続的に続けていく下地ができつつある」と学生の成長ぶりに目を細める。西信さんは「コロナが収束しても地域が若者を支えていく街にしたい。そのためには、寄付をしてくれた人々と学生との交流をどれぐらい深くできるかが大事」と力説する。
 「これまでは社会人から提案されることが多かった。私たちからも、もっとアイデアを出していきたいね」。ミーティングの後半、山田さんはこう切り出した。大人たちの思いは着実に学生たちへ伝わっている。

東彼東彼杵町で茶農家の手伝いに取り組む学生たち(西信さん提供)