アニサキス、警戒で生魚離れ 安全性確立へ対策進む

検査装置で紫外線を照射され、青白く光るアニサキス

 魚の寄生虫「アニサキス」による食中毒への警戒から消費者の生魚離れが進み、京都、滋賀の流通事業者や市場関係者が危機感を強めている。スーパーで刺し身の販売が低迷するなど影響が深刻化しており、京都市中央卸売市場などは対策の徹底を卸売業者に求めた。京都のメーカーが開発したアニサキスの検査装置の注文が相次ぐなど、安全性確立に向けた動きが広がっている。

 アニサキスは長さ2~3センチ、幅0.5~1ミリ程度の糸状で、サバやイカ、タラなどに寄生する。魚が生きている間は内臓に潜んでいるが、魚が弱ったり、死後に鮮度が落ちたりすると筋肉へと移動。食事を通して人の体内に入ると、胃壁や腸壁を刺すなどして、激しい腹痛を引き起こす。60度で1分以上の加熱するか、マイナス20度で24時間以上冷凍すると死滅する。

 芸能人がアニサキスの被害を報告したことをきっかけにあらためて注目を集め、生魚を避ける傾向が強まった。大手スーパー平和堂(彦根市)では、5月中旬からの約1カ月で刺し身などの生魚の売り上げが1割減少。広報担当者は「回復が見えない」と嘆く。食品スーパー「フレスコ」を運営するハートフレンド(京都市下京区)でも、生魚の売り上げが5%減っているという。京都市中央卸売市場では、5月のサバの平均単価が前年同月比で2割下落。「風評被害の影響も考えられる」(業務課)と危機感は強い。

 こうした状況を受け、市や卸売業者らでつくる水産物部食品品質管理委員会は5月22日、市場に入る97の関連業者に予防方法を伝える文書を送り、あらためて徹底した管理を求めた。

 京都全魚類卸協同組合の田村靖也管理委員長は「市場では新鮮な魚を扱い、出荷前に加工する場合はすぐに内臓を取り除く。知識を持つプロが寄生虫がいないか目視しながらさばいている」と市場から出荷する魚の安全性を強調する。市健康安全課によると、アニサキスによる食中毒の保健所への届け出が義務付けられた2013年以降、市内で3件の被害が報告されたが、仕入れ先不明の1件を除き、いずれも市場以外で買った魚が原因だった。

 アニサキスの有無を調べる装置の需要も高まっている。計量機器メーカーのイシダ(左京区)は15年に京都大と検査装置を共同開発した。1台21万6千円だが、スーパーや居酒屋の注文が急増し、4月以降の販売台数は前年同期の1.5~2倍という。今月には自動でアニサキスを取り除く大型製品も発売した。

 同社広報係は「人手不足で、アニサキスを確認できるベテラン従業員が減ったのも被害が増えた一因では。検査を通じて店舗や消費者を守りたい」と話している。

シダが販売するアニサキス検査装置。魚の切り身などを入れると、肉眼では見えにくいアニサキスが紫外線に反応して青白く光る仕組みだ

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