王将社長射殺でたばこの吸い殻にDNA型 暴力団組員の関与浮上も捜査は難航 

 京都市山科区の王将フードサービスの大東隆行前社長=当時(72)=が射殺された事件は19日で5年となった。京都府警捜査本部(山科署)は延べ約16万5千人の捜査員を投入し、現在も91人態勢で捜査。現場付近で見つかった遺留品などから福岡県を拠点にする暴力団組員の存在も浮上するが、事件への関与を示す証拠は乏しく、捜査は難航している。

 事件は2013年12月19日午前5時45分ごろ、山科区の本社ビル前で発生。車で出勤してきた大東さんが降車した直後、何者かに拳銃で腹や胸を撃たれて死亡した。現場から薬きょう4個と25口径の銃口から放たれた弾丸が見つかった。

 付近で押収されたたばこの吸い殻からは、福岡県を拠点とする組員のDNA型が検出されたが、事件との直接的なつながりは不明なままだ。

 これまでの捜査で、現場から北東約2キロのアパート駐輪場に放置されていたオートバイから、銃を撃った際に残る硝煙反応が検出された。近くには、ナンバープレートが付け替えられた盗難ミニバイクが乗り捨てられていた。いずれも逃走用に使われたとみられるという。

 捜査関係者によると、ミニバイクの盗難被害は13年10月9日。伏見区の飲食店の防犯カメラにミニバイクを盗む2人組とともに白い軽乗用車が映っていた。オートバイは同日、城陽市で盗まれたものだった。軽乗用車は福岡県内のナンバーで、事件当時の所有者は、組員と同郷で同世代などのつながりもあった。府警は事件後、福岡県内に戻っていた軽乗用車の動向を注視し、16年に押収。しかし、事件に直結する物証などは得られなかったという。

 一方、王将フードサービスの第三者委員会は16年、創業家と特定の企業グループとの間で不適切な取引が続けられ、王将から約200億円が流出していたことを明らかにした。府警は王将社員ら関係者延べ約1900人から話を聞き、事件に直結するトラブルがなかったか捜査を続けている。

 事件から5年となるのを前に、大東さんの長男剛志さん(44)は府警を通じてコメント文を発表。「父がなぜ殺されなければならなかったのか、困惑は強まるばかり」と記し、「父の志を踏みにじった犯人は一刻も早く捕まって、極刑に処せられるべきだと思っています」と訴えている。

 府警は19日朝、京都市山科区のJR山科駅付近で情報提供を求める広報活動を行う。捜査本部(0120)089110。

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