宇宙のきらびやかな宝石箱。ハッブルが撮影した小マゼラン雲の散開星団

【▲ 小マゼラン雲の散開星団「NGC 330」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Kalirai, A. Milone)】

こちらは南天の「きょしちょう座」(巨嘴鳥座)の方向およそ18万光年先、小マゼラン雲にある散開星団「NGC 330」です。青色、黄色、オレンジ色といった様々な色の星々が散りばめられたカラフルな星団の姿には、銀河とはまた違った美しさを感じます。

恒星の色は表面温度と関係があって、高温の星は青く低温の星は赤く輝きます。太陽のような青年期~壮年期の恒星(主系列星)は質量によって表面温度と寿命が異なり、重い星ほど寿命は短く高温で明るく、軽い星ほど寿命は長く低温で暗くなります。恒星としての一生の長さが異なる星々が集まっていることが、星団のカラフルな色合いの一因となっているわけです。

ただ、星団に属する星々は同じ分子雲(ガスや塵の集まり)から形成されると考えられていて、恒星としての最期を迎えるまでの期間はそれぞれ異なるとしても、誕生した時期はどれもほぼ同じだとみられています。そのため、星団は星の形成と進化を研究する上で天然の実験室として重宝されています。欧州宇宙機関(ESA)によると、このNGC 330の画像は、星団の星々が別の場所にある星々とは異なる進化を遂げているように見える理由を理解するための研究と、超新星爆発を起こすような星にはどれくらい巨大なものが存在し得るのかを見極めるための研究、この2つの異なる目的のために取得されたデータが用いられています。

冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」による赤外線・可視光線・紫外線の観測データをもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「A Scattering of Stars」として2021年6月28日付で公開されています。

▲冒頭の画像の動画バージョン▲
(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Kalirai, A. Milone, Music: Stellardrone – The Edge of Forever)

関連:多数の「青色はぐれ星」を抱える球状星団M53

Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Kalirai, A. Milone
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏

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