巨人破竹8連勝のウラに原監督 “マッチング話法” 絶妙すぎる「鬼」と「仏」の使い分け

巨人・原監督のタクトが冴えに冴えている

巨人は乱打戦となった29日の広島戦(東京ドーム)を11―8で制し、今季最長の8連勝を飾った。主役は2発を含む3安打、6打点と大暴れした主砲・岡本和真内野手(24)。今でこそ主力勢の活躍が快進撃を支えているが、戦力が整わない中で2位をキープできているのは原辰徳監督(62)の采配だけでなく、タイミングを間違わない〝マッチング話術〟にもあった。

壮絶な打ち合いに終止符を打ったのは、主砲のひと振りだった。8回に8―8の同点に追いつき、なおも二死一、三塁のチャンスで岡本和はこの日2発目となる決勝の23号3ラン。点を取られては取り返す乱打戦にケリをつけ、連勝を「8」まで伸ばした。

連勝街道を走る最大の要因は、ようやく固定できたクリーンアップが機能していることだろう。この日も3回、丸、岡本和、坂本に3者連続タイムリーが飛び出し、丸は一軍復帰した18日の阪神戦(甲子園)から9試合で打率3割9分4厘(33打数13安打)、4本塁打、12打点と当たりが止まらない。

ただ、主力に故障者が続出するなど戦力が揃わなかった中、2位の好位置につけられるのは原監督による手腕も大きい。采配面だけでなく選手にノビノビとプレーさせることや、時には伸びた鼻をへし折って成長を促すことも重要な役割の一つ。その一端をのぞかせたのが、先週の北陸遠征だった。22日の金沢でのDeNA戦前の練習で、原監督は前カードの阪神戦(甲子園)の反省を踏まえて次々とナインに声をかけて回った。

そのうちの2人が香月と松原だった。香月は20日の3戦目の勝負どころで代打に送ったが、犠打を失敗した末に見逃し三振。原監督は珍しくベンチをぶっ叩き、チームに戦慄が走った。その香月に対してはこう言葉をかけたという。

「香月、俺はお前を怒っているんじゃないだよ。そうじゃない。そんなことは心配する必要はない」。ともすれば、懲罰として二軍に送られても不思議ではなかった上に指揮官は大噴火…。だが、起用したベンチの責任だと伝えることで委縮しまいそうな香月のメンタルをフォローした。

一方で〝ムチ〟も打った。それが1番打者に定着しつつある松原だ。同じく20日の試合で殊勲の決勝2ランを放った若武者をチクリとやった。野球経験がない父親から毎日のように送られてくる助言を〝スルー〟しているとの発言を注意し「『お父さんにもう少し敬意を表さないとダメだ』と。(プロ野球選手は)子どものあこがれだからね」と諭したそうだ。

指揮官が動いたタイミングは阪神戦を2勝1敗で勝ち越し、チームの雰囲気も上々の状態。1日の移動日を挟み、相手の気持ちも頭も整理され、聞く耳を持っていることを見越して打った一手だった。

「やっぱり会話とか言葉とかは、我々のある種の武器とまでは言わないけど、大事なこと。寡黙じゃ監督は務まらないでしょうな」(原監督)。伝えるべきことは伝えるが、タイミングだけは間違えない。こうした目には見えないやり取りも強いチームづくりにつながっている。

この日は8投手をつぎ込む総力戦に「締まりのない、あまりしたくないゲーム」としながら「最終的に勝てたというのは非常に明日への活力になる」と語った指揮官。2・5ゲーム差で首位を走る虎の尻尾は離さない。

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