高校野球の過密日程解消へ一石 “500球制限”もクリアする北海道高野連の大改革

北海道高野連の横山泰之専務理事【写真:石川加奈子】

南・北北海道大会準決勝前に5日間の休養日

高校球児の健康管理のあり方が問われる中、北海道高野連は今夏の南北海道大会(7月17日開幕、札幌円山)と北北海道大会(7月15日開幕、旭川スタルヒン)で初めて5日間の休養日を設ける。その狙いとは? 北海道高野連の横山泰之専務理事に話を聞いた。

10支部の予選を勝ち抜いた16校ずつが出場する南・北北海道大会が大きく変わる。17年から準々決勝と準決勝の間に設けていた休養日(1日)を5日間と大幅に増やした。

大会の前半(1回戦及び準々決勝)と後半(準決勝及び決勝)の間を5日空けることで、1週間500球の球数制限を気にする必要がなくなる。順延がなければ、準決勝と決勝登板時に準々決勝以前の球数はカウントされないからだ。ただ、500球制限にかからないようにという配慮から議論が出発した訳ではないという。

「500球の話ありきかというと、それが第一ではありません。元々、日程的に詰め過ぎでしたし、北海道も暑くなってきています。少しでも良い体調でやらせてあげたいということがスタートでした」。そう語る横山専務理事自身、砂川北の投手として92年夏の甲子園に出場した元高校球児である。

広い北海道ならではの特殊事情も考慮

日本高野連が今夏の第103回全国高校野球選手権大会の休養日を計3日に増やしたように、過密日程解消は時代の流れ。中5日に決着したのは、地理的な要因が大きい。

函館や釧路など開催地から数100キロ離れているチームが大会に参加するには宿泊を伴う。長い場合、10泊程度の長期遠征になる。「疲労回復とともに、宿泊を長くしないということも考えました。(間が)2日や3日だと、そのまま残る選択肢が出てきたり、帰ってもすぐ出発となります。一旦地元に帰って、自分のグラウンドで練習して、家でリラックスして、準決勝に臨んでもらいたいということです」と横山専務理事は説明する。

もちろん、昨年導入された球数制限も見据えての決断だ。実は1週間で500球というのは、北海道高野連にとって現実的な問題だった。例年同様7日間の日程を組んで独自大会として行った昨夏の南北海道大会では、札幌国際情報の原田航介投手(3年)が決勝の札幌第一戦の5回2死で500球に到達して途中降板し、チームも敗れた。甲子園につながらない大会だったとはいえ、その降板は大きくクローズアップされた。

導入前の19年夏の南北海道大会でも、決勝で延長14回を戦った北照の桃枝丈投手(3年)は1週間で590球、札幌国際情報の原田投手は485球を投げた。「選手の健康管理を第一に、当然500球も視野に入れながら、どういう日程なら公平性が保てるかということも議論しました。このチームは1回戦の球数はカウントされるけど、ここはカウントされないとなるとさすがに不公平なので。そういう考えもあって、思い切って5日になりました」。

議論の中では、中5日にすることで逆に投手1人で投げ切るケースが増えるのではないかと予想する声もあった。「逆行しているんじゃないかという意見もありましたが、やはり甲子園がかかる夏と秋はより良い状態、より納得した状況でやらせてあげたいということで落ち着きました」と経緯を明かす。

秋も同様の措置 将来的に札幌ドーム使用も

7日間で最大5試合と超過密日程だった秋季全道大会についても、今夏と同様に準々決勝と準決勝の間を5日間空ける。

さらに、秋については、日本ハムが本拠地を北広島市に移転する23年以降に札幌ドームの使用を検討している。「9月の第1週でシーズンが終わってしまう学校があるという状況を何とかしてあげたいです」と横山専務理事はその理由の一端を挙げる。

10月の札幌の平均気温は13度で、日没は中旬の午後5時を境にどんどん早くなっていく。そのため、秋季全道大会は10月中旬までに終了するのが通例。そこから逆算して実施される支部予選は、早い場合9月上旬にスタートする。

過去の例では、16年夏の甲子園で準優勝した北海が甲子園の決勝から2週間足らずで新チームの公式戦を終えた。8月21日に決勝を戦って翌日札幌に帰り、24日に新チーム始動。25日に札幌支部予選の組み合わせ抽選会に臨み、9月3日に東海大札幌と対戦という過酷なスケジュール下で初戦敗退した。

天候にも日没にも左右されないドームなら10月中旬以降の全道大会開催が可能になる。「そうすれば、支部大会も後ろに下げることができます」と横山専務理事。使用料や環境面での課題も多いが、メリットとデメリットを見極めながら、球児のためにさらなる改革を推し進める。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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