「長期投資のキホン」分散投資の中身“ポートフォリオの作り方”

老後資金や教育資金など、いつか使うためのお金をできるだけ増やしたい。そんな理由で株式や投資信託などに興味を持つ人も多いでしょう。でも、何から初めていいのか分からず、なかなか投資をスタートできないこともあるようです。

そこで投資のプロであるウェルスナビ執行役員リサーチ&クオンツの牛山史朗さんに、3回にわたって「投資の基本のキ」を伺います。

3回目は「投資の中身の作り方、見直し方」について聞きました。


1回目【投資の基本のキ1】投資はどのくらいの期間続けるべき?
2回目【投資の基本のキ2】いくらまで投資していいの?

お金があるところ=世界中に投資するのが基本

世の中には数多くの金融商品がありますが、ただ「儲かりそう」と思って飛びつくのは危険。「お金は何の理由もなく増えることはない」と牛山さんは断言します。では、一体どんなところに投資すべきなのでしょうか。

牛山さんが初心者に勧めるのは「世界中への分散投資で、たとえば全世界株式やS&P500などのインデックスファンドや世界全体に分散投資をするロボアドバイザー 」。このうちインデックスファンドとは、東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価などの指標に連動するように作られた投資信託です。個別の株を買わなくても、インデックスファンドを購入するだけで複数の銘柄を購入したことになるので、個別株購入に必要な分析の必要もなく、値動きなどのリスクも分散できます。さらに全世界株式であれば、その名の通り世界各国の株式市場に連動します。牛山さんはこの投資方法を「世界中の会社のオーナーになるようなもの」と例えます。

「今の日本は景気が良くありませんが、高度経済成長期には大きく成長しました。それと同じように、今も世界のどこかで経済は大きく発展し続けています。どの国が大きく伸びるというのは事前に分からなくても、世界全体に投資をしていると、経済成長が活発な国の波に乗れるというわけです」

2020年2〜3月は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、世界的な株価の下落がありました。しかし、ワクチン開発などの話を受けて、株価は再び上昇しています。

「リモートワークも定着し、これまでとは違った形で経済が回っている。状況は変わっても、そこに適応することで、世界経済は長い目で見ればしっかり伸びていくと思います」

リスクが取れる、取れないで投資内容の見極めをする

リターンを考える一方で、リスクについて考えることも忘れてはいけません。リスクを抑える意味でも先ほど紹介した分散投資は有効ですが、牛山さんはさらに「ポートフォリオをしっかり組み立てほしい」とアドバイスします。

ポートフォリオとは、運用にする金融商品の組み合わせのこと。株式や債券、不動産、金などの資産を必要に応じて組み合わせて購入、保持することを「ポートフォリオを組む」といいます。ポートフォリオを組んで資産を分散させることで、「株が下がっても債券は下がらなかった」というように、リスクを分散させることができます。ただ、このポートフォリオの作り方は、投資する人によって異なってくるようです。

「例えば、まだ若くてこれから収入が見込める人なら、相場が下がって資産が一時的に減っても許容できる範囲が大きくなります。そのために株などのハイリスクハイリターンの資産を多く組み入れるなど、リスクをとっても問題ありません。収入が安定的に見通せる人もリスクが許容度が高い人です。一方で、まもなくリタイアを迎える人などは資産が目減りした際にそれを上回る収入が期待しづらいため、ローリスクローリターンの債券の比率を高くするなどの工夫が必要になります」

今後何十年と働き続ける予定の若い世代でも、コロナ禍で収入が安定しなくなり、今後に不安を抱えている人もいるでしょう。「毎月の収入が安定しない人は、あまりリスクを取らないほうがいい」と牛山さん。

「収入だけでなく、ご自身の性格も考慮してください。投資を始めてもすぐに利益が出ないと焦る人は、投資でリスクを取り過ぎると、日々の生活が窮屈になるだけ。こうした性格であれば、リスクを抑えたポートフォリオを組んだり、投資する金額を抑えて預金にするのも一つのリスクヘッジです。一方で、今回のコロナ禍のようなことがあっても資産の一時的な目減りが気にならない人はリスク許容度が高いと言えます」

リスク許容度が高い人

・若い世代(今後収入が見込める人)

・公務員など、コロナ禍でも収入が安定している職種、業種

・多少の値動きに不安にならない人

リスク許容度が低い人

・リタイアが間近な人

・自営業など月々の安定収入が見込めない人

・利益が気になって焦ってしまう人

基本は「ほったらかし」。でも、たまの見直しを

ところで、雑誌やウェブ記事の見出しなどで「ほったらかし投資」という文言を目にしたことはないでしょうか。長期投資はお金が増えそうなところに投資して、そのまま置いておけるのがメリット。その点、忙しい人にも向いています。ですが、「定期的なメンテナンスは必要」と牛山さんは注意を呼びかけます。

「自分のリスク許容度に合わせてポートフォリオを作っても、時間が経つとバランスが崩れていきます。株価が上がって資産が株に偏っていき、知らない間にリスクが増えているということも。それを防ぐために、定期的にポートフォリオを見直してください」

この見直しは「リバランス」とも言います。リバランスの頻度はあまり多くなくてもOK。半年に一度、バランスが崩れていないかを確認し、株が多ければ売って債券を買い足すなどして、自分のリスク許容度にあったポートフォリオになるように調整しましょう。「毎月の積み立ての時期に、足りていないものを買うのでも大丈夫」と牛山さんは話します。

この特集「投資の基本のキ」の第一回で牛山さんが話してくれたように、投資は考えれば考えるほど上手くいくのものではないようです。目標とする期間やリスクの取り方、見直しの頻度などの要点だけをしっかり押さえて、「習うより慣れろ」の気持ちで、最初の一歩を踏み出してはいかがでしょうか?

「長期・積立・分散」の資産運用を全自動で行う「ウェルスナビ」。執行役員リサーチ&クオンツの牛山史朗さん

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