【薬剤師養成検討会】「薬剤師にしかできない業務に取り組むべき」/とりまとめを公表/調剤業務を引き続き検討

【2021.06.30配信】厚生労働省は6月30日、「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」のこれまでの議論のとりまとめを公表した。養成では入学定員の抑制への実行を掲げた一方、「薬局及び医療機関の薬剤師の業務(調剤業務、ICT対応)」の項では、「対人業務の充実と対物業務の効率化のためには、薬剤師しかできない業務に取り組むべき」と記載。「それ以外の業務は機器の導入や薬剤師以外の者による対応等を更に進めるため、医療安全の確保を前提に見直しを検討することが必要である」と記載した。調剤業務の見直しに関して引き続同検討会で検討していくとした。今後の注目は「調剤業務の見直し」になりそうだ。

感染症やワクチンの内容をカリキュラムに

とりまとめでは、全体版以外に、概要版をつけている。

概要版では、まず「薬剤師の養成等」と「薬剤師の業務・資質向上」の2つの柱に分け、それぞれをさらに、「養成」「薬学教育」「国家試験」と、「薬局及び医療機関の薬剤師の業務」「薬剤師の資質向上」に分けた。

「養成(入学定員、薬剤師確保)」では、将来的に薬剤師が過剰となることが想定されることから、入学定員数の抑制も含めて早急に検討し、「対策を実行すべき」と記載。
この表現は日本薬剤師会副会長の安倍好弘氏がより強い表現が必要として変更を求めてきた内容で、安倍氏の要請した文言に決着した。
安倍氏は、教育目標の設定とその達成度に応じた入学定員の設定を提案してきており、具体的な評価指標の議論が文科省で進められることが考えられる。
安倍氏は具体的な指標として「入学者の6年間での卒業者率」などを挙げており、こうした実態に即した評価が進むことが望まれる。

「薬学教育(カリキュラム、教員、卒業までの対応)」では、今回の検討会の議論を踏まえたカリキュラムとすべきとされた。
具体的な内容としては、在宅対応のための介護知識、OTC対応を含めた健康サポート機能、感染症や治療薬・ワクチンなどを挙げている。
併せて、標準修業年限内での国家試験合格率などの適切な公表もすべきとした。
研究能力のある薬剤師の養成や教員の養成も課題とした。

「国家試験」の項では、継続的に合格基準や出題基準の見直し要否を医道審議会で行うべきとした。

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<編集部コメント>
ここまでが養成に関わる箇所だが、各事項に「すべき」と強い表現で決着したとりまとめは、今後の影響力も大きいといえる。
昨年7月の検討会立ち上げから、わずか1年で、薬学部の根深い問題にメスを入れることになった。

卒後研修の制度化は「卒前と一体的な検討を」

次に、「薬剤師の業務・資質向上」の柱の「薬剤師の資質向上(卒後研修、生涯研修・専門性)」においては、免許取得後の研修の重要性を明記。その上で、「卒前(実務実習)・卒後で一貫した検討が必要」とした。

検討会では卒後研修の義務化、制度化を求める声もあったが、一方では「では、卒前研修(実務実習)は十分なのか」との疑問の声もあり、卒前・卒後を一貫した考え方で研修プログラムや実施体制の検討を進める必要があるとの結論に至ったようだ。

ここは「まず制度化ありき」ではなく、現場の受け入れ体制の拡充を含めて、実態を伴った改革を行っていく確実な方向性が示されたといえる。

最後に、「薬局及び医療機関の薬剤師の業務(調剤業務、ICT対応)」の項だが、どちらかというと、こちらが現場の薬剤師に影響の大きいところだろう。

「薬局及び医療機関の薬剤師の業務(調剤業務、ICT対応)」では、調剤業務の見直しを検討するとしている。
下記の表現を盛り込んだ。

「対人業務の充実と対物業務の効率化のためには、薬剤師しかできない業務に取り組むべきであり、それ以外の業務は機器の導入や薬剤師以外の者による対応等を更に進めるため、医療安全の確保を前提に見直しを検討することが必要である。(本検討会で引き続き検討)」

今後、どのような方向性での議論が進むのか、注目される。

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<編集部コメント>
当メディアでは重ねて指摘してきたように、「調剤業務の見直し」の議論は、 4月20日の規制改革推進会議において「調剤の外部委託」が提言され、その後、答申では「調剤業務の効率化:薬局における薬剤師の対人業務を充実させるため、調剤技術の進歩や医薬品の多様化等の変化を踏まえ、調剤に係る業務プロセスの在り方を含め、医療安全を確保しつつ調剤業務の効率化を進める方策を検討し、必要な見直しを行う」という表現に着地した経緯がある。

こうした要請に基づく議論が本検討会で行われる見込み。

発端の4月20日の規制改革推進会議に関しては、議事録が公開されている。
この中で専門委員の武藤正樹氏(社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役)は、医療機関の調剤業務の外注も必要だと発言している。
「病院や診療所の院内調剤の業務の外注化も必要だと思うのですけれども、いかがでしょうか。特に地方に行きますとどうしても病院の薬剤師さんが少ないものですから、院内調剤業務を外注化する。これも必要だと思います」(武藤氏)。

これは薬局間の連携とは違い、外注という形で医療機関の調剤が効率化されれば、医薬分業の推進を妨げる可能性を含めて深刻な問題を抱えることになる。

前回の「とりまとめ案」から今回の「とりまとめ」を見比べると、「調剤業務」の項に、以下の文言が追加となっている。

「なお、特に病院において薬剤師が不足する中で、病棟等における業務を充実させるためには、薬剤師確保に努めつつ、対物業務については、薬剤師以外の人材の活用等を検討すべきとの意見があった」

「意見があった」という、やや弱い表現での記載ではあるが、こうしたことからも、一部に、薬剤師不足を理由とした「病院の調剤の効率化」を求める声が根強く存在していることが表れている。

関連テーマに関しては、日本薬剤師会会長の山本信夫氏も強い警戒感を示している。
6月26日の同会定時総会の会長演述の中で、「ワクチン」の問題に続いて、2番目に調剤外注化について語っており、「医薬品の専門職として、効率のために本質的な業務を外注するのは本末転倒」とするとともに、「他の専門職種から本質的な業務に関して意見されることは看過できない」と、強い口調で抗議していた。
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https://www.dgs-on-line.com/articles/1011

それだけ、危機感の強いテーマであることがうかがえる。
今後の議論の行方を注視していく必要がある。

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