先発全員安打で連敗止めた鷹 柳田を2番起用した意図と練習にあった変化

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

西武戦で15安打9得点の猛攻で連敗を4で止めたソフトバンク

■ソフトバンク 9ー1 西武(30日・北九州)

ソフトバンクは30日、北九州市民球場で行われた西武戦に9-1で快勝した。先発全員安打の猛攻を見せ「鷹の祭典2021」の2戦目で初勝利。連敗を4で止めて、貯金を再び1とした。

この日、打線の火付け役となったのは「2番・柳田」だった。初回先頭の三森が中前安打で出塁すると、柳田が左中間フェンス直撃の適時二塁打を放ち、幸先よく先制。さらに中村晃が右前安打で続き、栗原の犠飛で2点目を挙げて試合を優位に進めた。

3回には相手の失策を機に明石の二塁打、谷川原の2点適時打、松田の2ランで一挙に4点を追加。4回には栗原がソロ、5回には甲斐のソロ、今宮の適時打と安打が次々に飛び出して前半で勝負を決めた。貧打に喘いでいたのが嘘のような先発全員安打で、15安打9得点を奪う猛攻だった。

秘策「2番・柳田」は「コーチ陣とヘッドコーチからの提案」

試合後、工藤公康監督は開口一番に「ナイスゲーム。素晴らしい先制攻撃でしたね。ナイス打撃コーチ、ナイスヘッドの『2番・柳田くん』の的中でした」とコーチ陣を称えた。「2番・柳田」は5月7日の西武戦以来の起用だった。その後は、打線の核として4番に柳田を据えてきたものの、打線に元気がなく、6月22日のロッテ戦から3番に置いていた。

2番起用を「打撃コーチ陣とヘッドコーチからの提案です」と明かした工藤監督。この意図について「先制点だと僕は理解しました。柳田くんが出て一、二塁となれば、晃くんならバントも右打ちも出来る、というところでの3番だと思います。実際に(初回)一、二塁になったらバントしますか、と言っていたので」と語る。

今季、2番、3番、4番で起用されているが、実は2番での打撃成績が最もいい。この日を除き15試合で打率.344。打撃の調子などもあるだろうが、3番の.257、4番の.281と比べて高い。出塁率も4割を超える.412だった。チームの“最強打者”であり、出塁能力の高い柳田を2番に置き、まず先制点を取ることを狙った。まさに初回の攻撃は狙い通りの形だった。

貯金がなくなり5割に逆戻りした28日の京セラドームでの西武戦後、工藤監督はコーチ陣を集めてミーティングを実施した。コーチミーティング自体は毎日行われるが、敵地に残り、試合後すぐに行われるのは異例のことだった。

試合前の打撃練習がこの日から“回し打ち”の形式に変化

工藤監督は「みんなの思いは一緒だと思っています。大事なのはチームが1つになって進んでいくこと。その思いが一緒であれば、何かを変えても選手も理解してやってくれると思っている。コーチ陣も考えて、アイデアを出すことが大事。まずコーチが動いて、それを理解して選手たちはやってくれれば」と語っていた。

1つの“変化”が試合前練習にあった。普段は2人1組で2箇所で数分間打ち続ける打撃練習だが、この日は4人1組ないし3人1組になり、4、5球ずつ打っては入れ替わる“回し打ち”の形式を取った。指揮官は「4、5本という中でタイミングを合わせて打つこと」と語り「それが形として出たのが良かった」と振り返った。

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言発出で、ソフトバンクは5月22日から自主的に無観客開催を続けてきた。28日の試合は大阪での開催。この日も北九州での開催だったとはいえ、地元・福岡のファンの前でプレーするのは1か月超ぶりだった。

「ウチの選手たちは分かりやすいですね。球場にファンの人が来てくださって力がもらえた。結果が出たのはファンの人のおかげ」と工藤監督も言う。7月1日は本拠地・PayPayドームへと戻る。この日の勝利とファンの応援が、反攻へのキッカケとなるか。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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