サンバダンサー「性的にねじ曲げないで」

表現と尊厳を踏みにじる迷惑行為【性的画像問題】

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 無断で性的な対象に仕立て上げられ、搾取される苦悩―。性的な写真を撮影されたり、画像を拡散されたりする性的画像被害は、派手な動きや踊りを見せるパフォーマーの現場にも潜んでいる。取材に応じてくれた元サンバダンサーは、ダンスを通じて観客に文化の魅力をアピールしたい意図をねじ曲げられ、本番の会場ではぶしつけなアングルから容赦なくカメラが追いかけてきたり、ネットでは自分の性的な画像が勝手に出回ったりしたという。「この子たちは、エロい目で見られることによろこびを感じているんだろう」という心ないコメントをネットで見つけ「ふざけるなと思った」。迷惑行為を行う人々に対し、相手の尊厳を考えてほしいと訴える。(共同通信=鎌田理沙)

東日本大震災の復興イベントで、踊りを披露するサンバダンサー=2016年10月、宮城県石巻市

 ▽好奇の目

 華やかさに魅力を感じ、大学入学後にサンバを始めた女性は「知らないところで私たちの表現がねじ曲げられている」と訴える。会場で勝手に撮影され、ネットで売買されることもある動画は女性の顔が隠され、お尻をしつこく狙うカットばかりなど、サンバの踊り手が表現したかったものとは程遠い。

 「個人の下着や肢体なんて、ダンサーとして見せているものではないし、素の自分の部分。そこばかり見られて動画を出されると、サンバダンサーとしても個人としても尊厳を踏みにじられていると感じる」

 ▽迷惑かどうか、一歩引いて考えて

 イベントに参加し始め、沿道から子どもを押しのけてまで、迷惑撮影をしに来る身勝手な人々の存在も知ったという。「私たちが見てほしいと思う人たちに迷惑をかけてまで撮りに来る人って、周りのことを考えていない。そんな人に『隠し撮りやめて』と言っても伝わらないと思ってしまう」と、やりきれなさを抱えている。

 現代日本において、表現の自由は全員に保障されている。ただその表現が人を傷つけていないか、いま一度立ち止まって振り返る必要がある。「ネットに拡散するなどの行為がサンバをしている人の尊厳を踏みにじるようなことになっていないか、一歩引いて考えてほしい」と訴える。

 露出度の高い衣装が悪いのではない。そのきらびやかさや魅力を一緒に楽しんでほしいのに、一方的に性的な搾取がまかり通る現状に、理不尽さはぬぐえない。

 ▽動きの美しさ

 日本最大級のサンバイベント「浅草サンバカーニバル」などに参加する団体は情熱的な踊りでサンバの魅力を広めている。衣装も本場ブラジルの形を踏襲した、露出が多いタイプのものを着用することに意味があると考える。

「浅草サンバカーニバル」で華麗な踊りを披露するダンサー=2015年8月、東京都台東区

 浅草サンバカーニバル1部チームの共同代表、石川敏明さんは「公道での催しのため、取り締まりはいたちごっこ」と説明。「主催者の方は理解してくれているが、まだ日本人には『裸踊り』と思われているところもある」と、一部の行為で誤解され、サンバの性的なイメージが広められることに苦言を呈した。

 ジェンダー問題に詳しい関西大の井谷聡子准教授は「動きの美しさなどを評価する目線と、ただ単に動いている身体としてお尻や胸元をセクシーだというのは明確に切り分けなければいけない。体をさらして競技をするのは、体の部位を切り取られて性的に消費されたいからではない。そのような写真の使われ方に合意したことはないはずだ」と指摘した。