【薬局管理者GL】池野会長「出店には影響しない」「5年は長い」/ドラッグストア協会の会見で

【2021.07.02配信】日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は7月2日に会見を開き、3年の経験を基準とする薬局管理者の選任に関する独自のガイドラインを公表した。 【関連記事:https://www.dgs-on-line.com/articles/1030】 このGLの運用に関して、JACDS会長の池野隆光氏はGLにそった出店をしていく方針を示すとともに、GLにそった出店でもこれまでの出店計画には影響しないとの考えを示した。また、厚労省のGLでは5年経験を推奨していることに関しては、「5年は長い」との認識を示した。

JACDSでは、薬局の管理者選任に関して、法令上に具体的な記載がないため、会員企業から目安を示してほしいとの声があったことから、「おおむね3年」という基準を示したとしている。

一方、この運用に関しては、JACDS会長の池野隆光氏は、「(3年の経験者を管理者とすることに関して)やっている店舗はすでにやっているので難しいことではない」との考えを示し、事業会社のウエルシアホールディングスでも今回のJACDSのガイドラインにそった運営を行っていく考えを示した。

「3年」の規定が今後の出店計画に影響するのかについては、「全く影響しない」とした。

一方、厚労省のGLでは「5年」の経験を推奨していたことに関しては、「5年は長い。年数での規定ではなく、教育など中身を伴う選任が必要ではないか」との見解を示した。

また、関連してJACDS専務理事の中澤一隆氏は、「5年の勤務経験は厚労省のガイドラインで望ましいとされているだけで法的義務ではない。むしろ、法律に年数規定がない中で、業界として3年という目安をプラスオンでつくったものとしてとらえてほしい」と話した。

「会員企業の声としても5年はとても無理という声が多かった」(中澤専務理事)とした。

今回の改正薬機法では、法令遵守にあたり薬局開設者と管理者等のそれぞれが負う責任と、その関係性が明確でないことが問題という観点から、開設者・管理者のそれぞれの責任を規定している。
例えば、管理者は保健衛生上支障を生ずるおそれがないよう必要があるときは、薬局開設者等に対し、意見を書面により述べなければならないとした。
一方、開設者には管理者の意見を受け入れて適切な措置を講じる体制整備が求められる。

薬局管理者の選任基準に関しては、いわば「社長に意見が言える能力と経験」がなければないといえ、相応のキャリアが必要との考えがある。
薬機法上では、「必要な能力及び経験を有する管理者を選任する」義務を規定し、厚労省のガイドラインでは、その中身について、以下のような文言で5年の経験を推奨していた。

「薬局開設者においては、こうした管理者の選任義務を適切に果たすため、原則として、管理者は薬局における実務経験が少なくとも5年あり、中立的かつ公共性のある団体(公益社団法人薬剤師認定制度認証機構等)により認証を受けた制度又はそれらと同等の制度に基づいて認定された薬剤師であることが重要である」

一方で、実態としてチェーンドラッグストアや調剤チェーン企業では5年未満の経験者が管理者となっているケースが多いとして、今後の業界の運用が注目されていた。

業界と行政の見解が分かれた形だが、これに対し、厚労省関係者は、「一概に何年がいいというのは明確な線引きはできないが、本来望ましいのは5年程度の十分な経験が必要。それは平成26年に公表している『薬局の求められる機能とあるべき姿』の際にも示したものであることもあり、ガイドラインに5年以上(+CPC研修受講)を盛り込んだ」と説明する。
「こうした経験を有する人が責任を持って対応してもらいたいというメッセージであり、あとは個別の薬剤師の能力等に応じて、企業の責任役員が判断すべきものと考えている」(厚労省関係者)としている。

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<編集部コメント>
例えば「医薬品の発注、仕入れ、納品、保管等の管理を適切に行う体制が構築されていなかったために、偽造医薬品を調剤し、患者に交付した」などの法令違反事例で考えると、経営者の指示だったのか、役員の指示だったのか、現場の判断だったのかの判別は難しい。
そこで、経営者はそもそも体制を整備しておく義務のほか、管理者が法令違反を認識していたのであれば、開設者や役員に意見したことを書面で3年間保存する。書面での保存は管理者の保護にもなる。
またこうした意見申述も含めて業務を遂行できるだけの能力・経験を有する管理者の選任もまた、開設者の責任となる。

たしかに、「どのような経験・能力であれば遂行できるのか」の基準は難しい。おそらく、不正が表面化した時に、そこに至った体制の責任が問われることになるだろう。

一方で、万が一にも出店計画や会社の現状を起点として、「何年なら可能」という考え方があるのであれば、今回の薬機法の理念にはそぐわないのではないか。
各管理者の経験・能力を判断するのは、個々の開設者の責任となる。

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