2週連続フロントロウ独占のアキュラは完敗。戦略成功のキャデラック31号車が“28分決戦”を制す/IMSA第6戦

 7月2日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第6戦『ウェザーテック240・アット・ザ・グレン』がアメリカ・ニューヨーク州のワトキンス・グレン・インターナショナルで行なわれ、雨や赤旗中断が絡む荒れた展開をウェーレン・エンジニアリング・レーシング(アクション・エクスプレス・レーシング)の31号車キャデラックDPi-V.R(フェリペ・ナッセ/ピポ・デラーニ)が制して今季初優勝を遂げた。

 カナダのモスポート・パークで予定されていたイベントがキャンセルとなり、その代替レースとして開催された第6戦は、前週に開催された第5戦の6時間レースに引き続き、ワトキンス・グレンでの連戦となった。今回の第6戦には5クラス・30台が参戦、決勝は現地時間金曜夕方、2時間40分で争われた。

 予選でPPを獲得したのは、第5戦に引き続きウェイン・テイラー・レーシングの10号車アキュラARX-05(リッキー・テイラー/フィリペ・アルバカーキ)。これに続いたのはマイヤー・シャンク・レーシングの60号車ARX-05(デイン・キャメロン/オリビエ・プラ)で、2週連続でアキュラ勢がフロントロウをロックアウトした。

 現地時間18時10分にレースがスタートすると、第1スティントはPPスタートの10号車アキュラがリードする展開に。2番手スタートだった60号車はキャデラック・チップ・ガナッシ・レーシングの01号車キャデラックDPi-V.R(ランガー・バン・デル・ザンデ/ケビン・マグヌッセン)と接触があり、2番手にはマツダ・モータースポーツの55号車マツダRT24-P(オリバー・ジャービス/ハリー・ティンクネル)がつける展開となった。

陽が傾くなか、2時間40分の決勝レースがスタート

 その背後の3番手争いで01号車キャデラックをを抜きあぐねていた31号車キャデラックのデラーニはスタートから20分、早めのルーティンピットを選択する。これが勝負のポイントとなった。

 スタートから38分、トップ2台がテール・トゥ・ノーズ状態で同時にピットへと向かうと、10号車アキュラはテイラーからアルバカーキへとドライバー交代。ティンクネルがコクピットにとどまった55号車マツダとの位置関係は変わらなかったが、コースに戻ると2台の間に31号車キャデラックのデラーニが割り込んできた。デラーニはアウトラップのアルバカーキをかわしてトップに浮上する。

 ペースの上がらないアルバカーキをティンクネルがパスすると、ピットタイミングが異なるトップの31号車キャデラックがピットへ向かいナッセへと交代。その直後、GTD車両のストップのためフルコースイエロー(セーフティカー)が導入された。

 セーフティカー(SC)先導で周回を重ねるなか、コースには雨が落ち始める。やがてコースの一部は完全ウエットとなり、ピットでは各陣営がウエットタイヤを準備し始めていたが、レースコントロールは雷も考慮して残り1時間36分のところで赤旗を提示、各車はSCに先導されたままピットレーンに戻りマシンを止めた。

序盤をリードしたアキュラ10号車は、アルバカーキへと交代後にペースを失う

■バン・デル・ザンデが見せた驚異のチャージ

 この時点でDPiクラスは55号車マツダ、10号車アキュラ、01号車キャデラック、31号車キャデラック、60号車アキュラ、5号車キャデラック(トリスタン・ボティエ/ロイック・デュバル)というオーダー。

 赤旗中もレース時間のカウントは続き、やがて天候は回復。雲間から夕陽も差し込むなか、約45分間の中断後、残り50分というタイミングでSC先導状態で各車は再びコースインしていった。

 翌周にプロトタイプクラスのピットがオープンとなると、各車がピットへと雪崩れ込んだ。ここで直近にピットストップを行なっていたため満タンまでの給油時間が短く済んだ31号車キャデラックがいち早くピットアウトに成功し、トップを奪う。

 以下、10号車アキュラが2番手、5号車キャデラックが3番手に浮上、01号車キャデラックと続き、ジャービスへと交代した55号車マツダはアウトラップでスピンを喫し、5番手へと後退してしまった。

 このあとイエロー解除までに01号車キャデラック、60号車アキュラが再度ピットに向かい給油を行なったため、31号車キャデラック、10号車アキュラ、5号車キャデラック、55号車マツダ、01号車キャデラック、60号車アキュラというオーダー、そして各車のギャップがない状態で最終スプリント決戦へと突入することとなった。

 残り36分でイエローは解除されるが、1周と経たずにデブリのため再びイエロー導入となる。

 仕切り直しのリスタートは残り28分時点。ここで5号車ボティエが1コーナーで2番手に浮上する。

 後方では10号車アキュラのアルバカーキ、55号車マツダのジャービス、01号車キャデラックのバン・デル・ザンデによる三つ巴のポジション争いが勃発。各所にウエットパッチが残るスリッパリーなコンディションのなかで強さを見せたのはバン・デル・ザンデで、まずは55号車をパス。次の周には10号車、5号車を立て続けにオーバーテイクし、一気に2番手へとジャンプアップを果たした。

 夕闇が迫るなか、バン・デル・ザンデはトップのナッセをコンマ差にまで追い詰める場面もあったが、最終的にはナッセが1.4秒差で逃げ切って、今季初優勝を飾った。

 3位は終盤に5号車キャデラックをパスした10号車アキュラが入った。キャデラック勢の表彰台独占を阻止し、ランキングでもトップを守っている。4位が5号車、5位は55号車マツダ、6位は60号車アキュラとなった。

前週からのワトキンス・グレン連勝とはならなかったマツダRT24-P
終盤にバン・デル・ザンデが追い上げを見せて2位に入った01号車キャデラックDPi-V.R

■シボレー・コルベットC8.RとレクサスRC F GT3がそれぞれワン・ツー

 LMP2クラスではPPスタートのPR1マティアセン・モータースポーツの52号車オレカ07(ベン・キーティング/ミケル・イェンセン)が序盤から主導権を握り、そのまま優勝。LMP3クラスはライリー・モータースポーツの74号車リジェJS P320(ガー・ロビンソン/フェリペ・フラガ)が2位の僚友91号車にわずか0.2秒の差でクラス優勝を飾っている。

 3台のみの戦いとなったGTLMクラスは、コルベット・レーシングのシボレー・コルベットC8.Rがワン・ツー。リスタート後にトップに立った3号車のアントニオ・ガルシア/ジョーダン・テイラーが勝利を挙げた。

 今戦ではIMSAウェザーテック・スプリントカップのポイントのみが付与されるGTDクラスは、序盤をバッサー・サリバンの12号車レクサスRC F GT3がリード。しかし最後のリスタート後にはチームメイトの14号車(アーロン・テリッツ/ジャック・ホークスワース)が12号車をオーバーテイクし、レクサスがワン・ツー・フィニッシュを遂げた。クラス3位にはハート・オブ・レーシングチームの23号車アストンマーティン・バンテージGT3が入っている。

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の次戦第7戦は、GTLMおよびGTDクラスのみが参加するライムロック・パーク戦(コネティカット州/7月16〜17日)となる。

LMP2クラスでPPを獲得した52号車のキーティング。決勝でもクラス優勝を果たした
GTLMクラスでワン・ツー・フィニッシュを遂げたシボレー・コルベットC8.R
LMP3クラスを制したライリー・モータースポーツの74号車リジェJS P320
14号車レクサスRC FがGTDクラスで優勝

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