【CBC賞】格上挑戦のファストフォースが日本レコードでV 超高速馬場の恩恵と難しさ

前日に続きレコードを更新したファストフォース

例年の中京開催から小倉開幕週での施行となったサマースプリントシリーズ第2戦(9・12セントウルSまで全6戦)のGⅢ・CBC賞(4日=3歳上、芝1200メートル)。格上挑戦の条件馬ファストフォース(牡5・西村)が積極策で押し切り、前日に更新された日本レコードをさらに塗り替える1分06秒0の音速タイムで初タイトルを獲得した。この勝ち時計、本当に速いのか、それとも…。“数字”の持つ意味について再検証してみたい。

1分06秒0。電光掲示板にレコードの文字が出た瞬間、1年ぶりに競馬場へと足を運んだ地元・小倉のファンから拍手が起こった。しかし、前日の競馬を見た者からすれば、この数字そのものに対しての驚きはまったくなく、むしろこの程度で止まったか、という印象のほうが強い。1999年にアグネスワールドが作った日本レコードを、2勝クラスのプリモダルク(戸畑特別=1分06秒4)が0秒1塗り替えた24時間後――。やはりというか、重賞レースの勝ち馬が日本記録をあっさりと更新してしまった。

「特別な馬場状態。ある程度は前に行かないと話にならないと思っていました。枠も良かったですし、返し馬の段階からスタートに集中していました」とは格上挑戦のファストフォースをGⅢウイナーへと導いた鮫島駿。必死に手綱をしごいた最初の200メートルでハナを奪取。そこが一番の勝因だった。無理にでも行ってしまえば残れる芝――。まさに度を越えた高速馬場と言えるだろう。その賛否は別にして、あまりにも速過ぎる今夏の小倉は勝つべき馬の戦法を限定してしまっている。

それは見守った西村調教師も同様だった。「こういう馬場で初ブリンカーでもあった。絶対にいいところがあるから、思い切って行ってくれと言っていたんだ」と作戦通りの逃げであったことを告白。もっとも、トレーナーから見た勝因は戦法だけでなく、休み明けでも18キロ減だった馬体重が大きかった様子。それまでは増え続けた馬体重がレースぶりに悪い影響を与えていたという。

「調教をビッシリやって、510キロ台まで持ってこれそうな感触があった。最初は福島の自己条件(前日の3勝クラス・テレビユー福島賞)を使うつもりだったけど、ハンデも軽かったので重賞を選択したんだ。この季節は合っているね」とシェイプアップした体と、軽ハンデがもたらした“果実”を喜んだ。

ただ、その一方で…。「サマーシリーズを狙いたい気持ちはあるが、それは相談してからになるし、これだけの速い時計で走った後。馬の状態を確認することが最優先かな」と西村師はダメージを心配していた。どうやら、次走を明言できない難しさも今夏の超速馬場には潜んでいるようだ。

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