国の登録文化財の建物がオフィスに生まれ変わる

築89年、東京・新橋の堀ビルがリノベーション

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堀ビルの外観

 東京・新橋駅のほど近く、外堀通りに面した一等地に重厚で存在感のあるビルがある。前を通るたびに「一体どういう歴史がある建物なのだろう」と興味を持って見ていた。そのビルがリノベーションされ、シェアオフィス「GOOD OFFICE 新橋」に生まれ変わった。(共同通信=中村彰)

 ▽現状を生かしつつ転生

 その建物の名前は「堀ビル」。錠前などを扱う会社「堀商店」が1932年に建設した。2020年まで本社ビル兼経営者の住居として使用。1998年に国の登録有形文化財となった。

 オーナーの堀家が直面したのが、維持費や相続税などの負担だ。しかし、「自分の代で壊すのはご先祖に申し訳ない」との思いから存続策を探っていた。

堀ビルの2階203号室

 一方、大手ゼネコンの竹中工務店は18年、歴史的建造物を生かす「レガシー活用事業」を始め、東京・九段下の「旧山口万吉邸」で実績を上げてきた。オーナーの思いが同社につながり、現状を生かしつつシェアオフィスに転生させるプロジェクトが始まった。

 ▽ドローンで検査

 堀ビルは鉄筋コンクリート造りで、地上5階、地下1階。延べ床面積は875平方メートル。神宮外苑の聖徳記念絵画館などで知られる建築家の小林正紹らが設計した。テラコッタタイルの外観と、内外のさまざまな装飾が特徴だ。

 堀商店の以前の社屋は関東大震災(1923年)の際、火災で焼失。その経験を踏まえ堀ビルはかなり頑丈に造られているが、それでも現在の基準に適合させるため改修が必要だった。

 竹中工務店は特徴ある屋内外のデザインを生かす、耐震など安全性の確保、オフィスとしての機能性重視を念頭に計画を進めた。

堀ビルの階段

 外壁のタイルはドローンによる赤外線検査や打診により、一部に剝落の恐れがあることが分かった。危険なタイルには透明なピンを打ち込み固定。近づいて見てもピンの存在が分からない仕上がりだ。

 全体の構造はしっかりしていたが、1階だけは耐震基準をクリアできなかったためチョウチョ型のブロックを積み上げて耐震壁を築いた。

 木の扉や床のタイル、階段の手すり、照明などは建設当時のものを活用。4階居室の和室やマントルピースも、なるべく元の雰囲気をとどめるよう工夫した。

 ▽レトロな雰囲気に安心感

 空調や電気の配管・配線は廊下の天井を利用し、極力目に触れないように。窓は二重サッシにして、外部の騒音を遮断した。

 中に一歩、足を踏み入れると、外堀通りや街の騒音はほとんど聞こえない。落ち着いたレトロな雰囲気は安心感を与えてくれる。

3階の自室で過ごす小八木克彦さん

 オーミインダストリー(本社・大阪市)の小八木克彦会長(76)は、このビルが賃貸に出ていると聞いて直ちに足を運び契約、東京での拠点として利用している。3階の自室で小八木会長は「趣があるビルで(街路樹の)緑も見えて、とても落ち着く」と満足そう。

 オーナーの堀信子さん(87)は「建て替える案などもあったが、主人の父が建て夫が守ってきた思いを受け止めて、残すことに決めた。いいものを残すということは大事なこと。とてもうれしい」と、肩の荷を下ろした様子だった。

「残すことができてうれしい」と話す堀信子さん=東京都港区

 入居者を募集している。詳しくは「GOOD OFFICE 新橋」ホームページ  https://goodoffice.work/locations/shimbashi/