今季初勝利でニューガーデンが反撃の狼煙。琢磨は追い上げ見せる/インディカー第10戦ミド・オハイオ決勝

 オハイオ州最大都市コロンバスの北60マイルにあるミド・オハイオ・スポーツカーコースは、全長2.258マイルの非常にテクニカルなサーキットだ。自然の地形を利用したレイアウトなのだが、ブラインドコーナーが多く、路面の傾斜は少々人工的に過ぎるのでは?と感ずるほど常に変化し続ける。コースの舗装も場所によって様々な素材が使われおり、グリップレベルが異なる。

 ここでのレースは、暑さから体力的にも過酷な戦いになることが多い。しかし、今年はそれほど暑くはならなかった。3デイイベントとされていたが、金曜、土曜日は涼しいぐらいだった。

 2回のプラクティスの後に予選、ポールポジションを獲得したのはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だった。これで3戦続けてのPP。予選2番手はコルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジェニアン)。3戦続けてニューガーデンにPP獲得を阻まれての、3戦連続予選P2だ。

 今回の予選ファイナルは、ペンスキー、ガナッシ、アンドレッティが2台ずつという近頃では珍しいパターンになった。そして、フロントロウはペンスキーとアンドレッティが分け合い、予選3番手はマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)のものとなった。彼にとって自己ベストの予選リザルトだ。

 予選4番手はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)で、予選5番手はミド・オハイオで6勝しているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)。

 そして、予選6番手はアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)のものとなった。ロッシは本来、第1セグメントで予選を終えているはずだった。彼はグループ内8番手だったが、2番手につけていたジャック・ハーベイ(メイヤー・シャンク・レーシング)がスピンして他車の妨害をしたとの判定から降格され、イエロー区間で減速しなかったシモン・パジェノーもペナルティで順位を下げられた結果、ロッシが2セグメントへ駒を進め、ファイナル進出まで果たした。

 ポイントリーダーのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)は、ギリギリでファイナルに進めない予選7番手。最後の最後でチームメイトのエリクソンに6番手のポジションを奪われてしまったのだった。2勝してランキング2位にいるパト・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)は、予選の第1セグメントでレッドタイヤにマシンセッティングがまったく合わずに敗退。20番手という後方グリッドしか手に入れることができなかった。

ニューガーデンがトップをキープしてレースは進む

 スタートからニューガーデンはトップを快走。2番手、3番手はハータ、エリクソンがキープした。その後方ではパワーがディクソンとのバトルの末にスピンし、そこへエド・ジョーンズ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)が突っ込んで、2台揃ってのリタイアとなった。

 パワーのタイヤ・チョイス=ブラックで序盤のトップグループを戦う作戦は悪くなかったが、レッドタイヤのディクソンに抜かせまいと頑張り過ぎたために2台は接触し、パワーだけがスピンした。

 逃げるニューガーデン、追うハータ。序盤の戦いはニューガーデン優勢だった。ブラックタイヤでの第2スティントからが勝負になると見られた。ところが、ハータはピットで脱落する。給油に長い時間がかかってしまった。さらに、彼は2回目のピットストップではエンジンストールの自爆。優勝争いに戻ることはできなくなった。

 ニューガーデンのペースに唯一ついて行くことができていたハータが消え、ポールシッターの戦いは俄然楽になった。しかし、レースの最終スティントになってエリクソンがスピードアップし、差をグングン詰めていった。

 レース中も上がり続けていた気温は今週最高の摂氏28度に達し、路面も45度以上に上がってニューガーデンのスピードに翳りが見え始めた。逆にエリクソンのパフォーマンスが上がった。

終盤追い上げを見せたマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)

 またしてもニューガーデン、そしてチーム・ペンスキーは最後に逆転されるのか?

 そうも思われたが、彼らの差は0.8秒以下にまで縮まることはなかった。ニューガーデンはプッシュ・トゥ・パスをフル活用し、必死で逃げた。最終2ラップではエリクソンのマシンがニューガーデンのすぐ後ろまで接近したが、アタックを仕掛けるところまで両者の距離が縮まることはなかった。

「残り10周ぐらいで、最後に背後まで迫られるだろうが、パスされるところまでは行かないだろうという計算ができた」とニューガーデンは余裕を見せた。

 ミスが絶対に許されない状況で、ミスなく走り切っての勝利はニューガーデンらしい強さが発揮されてもいた。しかし、彼が1ラップのうちに何回もプッシュ・トゥ・パスを使わなければ逃げられないほど、エリクソンの追撃は凄まじかった。

「あと2、3周あったら逆転できていたかもしれない」とエリクソンは話したが、あと2、3周早くチャージを開始して欲しかった。

 チーム・ペンスキーのインディカー初優勝(1971年のポコノ500)からちょうと50年という今週、ニューガーデンは記念すべき勝利を飾った。生まれ持った運の強さが彼に今週の勝利を実現させたように思える。この歴史的勝利で彼の今シーズンの不運は吹き飛ばされるだろうか?

 3回目のチャンピオンを狙うニューガーデンは、ポイントスタンディングは4番手のまま、ポイントリーダーであるパロウとの差を88ポイントから69ポイントに縮めた。

ニューガーデンを祝福するロジャー・ペンスキー

 今日のレースの3位争いはチップ・ガナッシ・レーシング勢同士で行われ、パロウがディクソンを上回って表彰台へ。セカンドスティントではディクソンが先行していたが、2回目のピットストップを遅らせてパロウは先輩チームメイトの前に出た。

 最終スティントではパロウの方がディクソンより速くなってもいた。これでパロウは今シーズン6回目の表彰台だ。5位はロッシ。6位は予選8番手だったグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。

表彰台を獲得し着実にポイントを重ねるアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)

 今日は後方グリッドから上位へ進出したドライバーが4人いた。予選18番手だったロマン・グロージャン(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)が7位でゴールし、予選20番手だったオーワードは8位までポジションアップ。

 予選22番手だったサンティーノ・フェルッチ(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は9位に食い込み、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)も予選19番手から10位でのゴールを見事果たした。それも、最終ラップにセバスチャン・ブルデー(AJ・フォイト・エンタープライゼス)をパスしての価値あるトップ10入りだった。

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