渋谷区×実践女子大学 「スタートアップ」をテーマに渋谷区グローバル拠点都市推進室の田坂氏が講演

実践女子大学では、今秋から就職活動に入る大学3年生を対象に、2021年5月26日、共通教育科目「キャリアデザイン」(担当:深澤晶久教授)においてオンラインによる講演を実施しました。学生たちに「起業」という選択肢を提示し、将来を含めてそのような進路があることを啓蒙するだけでなく、ベンチャー企業の魅力を伝えることがその目的です。講師としてお迎えしたのは、渋谷区役所でスタートアップ支援事業を担当する、渋谷区グローバル拠点都市推進室の田坂克郎氏。アメリカのサンフランシスコ州立大学大学院への留学をきっかけに、サンフランシスコ日本総領事館での勤務などを含め、長年にわたって「スタートアップの聖地」ともいわれるシリコンバレーを見続けてきた田坂氏から、お話をうかがいました。

渋谷区が世界的なスタートアップの街になる

講演では、最初に学生たちに向けて「スタートアップ」に関する解説が行われました。田坂氏によると「新しいテクノロジー、アイデアをもつ企業で、単年での事業拡大が事業計画に組み込まれている」ことを意味する言葉で、1990年代~2000年代にシリコンバレーで誕生。以来、世界のスタートアップの中心地となったシリコンバレーには、アメリカのベンチャー投資総額の40%にあたる600億ドル(約6兆円)が集まり、毎年3~4万社が起業されていると述べられました。

そして、1990年代から日本を代表するベンチャー企業を生んできた渋谷区は、日本で最もシリコンバレーに近い文化をもつエリアであると解説。将来的に、渋谷区を世界的なスタートアップの街にするため、国内外のスタートアップビジネスを誘致、その活動を支援する「SHIBUYA STARTUP SUPPORT(SSS)」という、渋谷区の取り組みも紹介されました。

キャリアを築いていくため重要な「違和感」

講演中には「暮らしの中にある違和感」というテーマで、田坂氏が学生たちに質問。これに対して学生からは、「就活は黒髪じゃないといけない」「男性が家事育児を『手伝う』ということ」「独身が下に見られがち」「みんな同じでなければいけないという雰囲気」など、活発な意見が出されました。

続いて田坂氏が紹介したのが、女性起業家の二宮未摩子氏です。二宮氏は、日本初の更年期に特化したオンライン相談サービス『TRULY』を立ち上げたことで話題となりましたが、起業に至るきかっけが「女性のライフステージに寄り添うソリューションがない」という違和感だったことを紹介。起業家(アントレプレナー)にとって「自分らしさの探究」、つまり自分の内側から出る違和感を大切にすることは、非常に大切であることが語られました。

また、シリコンバレーでの活躍からCNN「10 Visionary Women(10人のビジョナリーウーマン)」に選ばれた、女性起業家の堀江愛莉氏の「『自分らしい』をベースにしたリーダーシップがあってこそ、世界に通用するリーダーになれる」という発言も紹介。起業家になるだけなく、企業などでキャリアを築いていくためには、「外側(社会)からの期待によって形成する自分」ではなく、「こうしたい、こうありたいで形成する自分」を大事にすべきであることを強調しました。

学生たちの興味を集めた起業家への支援活動

講演の最後には、渋谷区が行っている起業家への支援活動も紹介されました。ひとつは、渋谷区と野村不動産、meeTalkが共同し、H1O神南に開設された起業家支援拠点。もうひとつが、起業家を育成するオンライン学校「SHIBUYA STARTUP UNIVERSITY(SSU)」で、起業に関心がある学生たちの参加も促されました。

こうした田坂氏のお話に対し、学生たちからは「自分に身近な渋谷区でスタートアップへの取り組みを行っていることをはじめて知った」「自分らしさを追求しながら働けるところに魅力を感じ、ベンチャー企業への興味が高まった」「H1OとSSU。ぜひ機会があるならば参加してみたい」「起業はしなくとも、自分が本当にやりたい仕事をめざしたい」など、いずれも積極的な意見が述べられ、学生たちが就活前に自身のキャリアを考えるうえで、今回の講演は大きな刺激になったことがうかがえました。

© 大学ジャーナルオンライン