ホンダF1田辺TDレース後会見:「レッドブルはホンダに強く期待している」2度目の表彰台登壇は大きな思い出に

 レッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンは、今季初の3連戦最終レースである2021年F1第9戦オーストリアGPをポール・トゥ・フィニッシュで締めくくった。第5戦モナコGPから数えて5連勝、ホンダにとっては16戦15勝を挙げたマクラーレン・ホンダ時代の1988年以来となる、33年ぶりの5連勝でもあった。

 レッドブルはレース後の表彰台に、ホンダF1の田辺豊治テクニカルディレクターを上げた。2年前のレッドブル・ホンダ初優勝に続いて、田辺テクニカルディレクターにとっては2度目の登壇だ。レッドブルのホームコースという特別な場所で表彰台に立てたことを素直に喜びつつ、「それだけレッドブルはホンダに強く期待している」と、身を引き締める田辺テクニカルディレクターだった。

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──3連戦の3戦目、マックス・フェルスタッペンが2戦連続のポール・トゥ・フィニッシュを果たしました。

田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):非常に力強くレースを支配した展開でした。モナコGPから始まった連勝も5まで伸ばすことができました。非常にいい形で進んでいます。

 とはいえ、まだ23戦中の9戦が終わっただけです。次戦のイギリスGPではスプリント予選という新しい形も控えています。そこに向けて十分に準備を重ねたいと思います。

2021年F1第9戦オーストリアGP 優勝を飾ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

──ほかの3名についてはいかがでしょうか?

田辺TD:(セルジオ・)ペレスはレース序盤、前をいくランド・ノリス(マクラーレン)に仕掛け、押し出される形で順位を落としてしまいました。その後はアグレッシブな走りでポジション回復を狙っていたのですが、逆に他車を押し出して2回の5秒ペナルティを科され、6位でレースを終えました。前戦も僅差でしたが、今回もほんの少し5位に届かず残念でした。

──アルファタウリのふたりはどうでしょう?

田辺TD:レースペースが厳しかったですね。(ピエール・)ガスリーは9位、角田(裕毅)はピットエントリーの白線を踏むミスを2回犯して12位でした。

──次戦のイギリスGPは、多くのチームにとって地元レースです。

田辺TD:はい。我々にとってもレッドブル、ホンダの両ファクトリーがミルトンキーンズにあり、ホームレースです。多くのチームがアップデートを投入するでしょうし、さらに激しい戦いになるでしょう。

──2年ぶりに表彰台に上がり、どんな気持ちでしたか?

田辺TD:2度目が回ってくるとは、まったく思っていませんでした。クリスチャン(・ホーナー代表)から、おめでとうの後に「表彰台には田辺が」と言ってきました。それを聞いていた人に、「(表彰台への)行き方は覚えているよな。今回は大丈夫だよな」と言われたり(苦笑)。

 1週間前には(ヘルムート・)マルコさんが登壇したりして、いかにもレッドブルのホームコースらしい、彼らにとって特別な場所という思いを強くしていました。それだけに1回目にとどまらず、今回も乗ることができました。そんな特別な場所に改めて上がることができて、自分の人生のなかでも大きな思い出になると思います。逆に言えば、レッドブルとしてはそれだけホンダに強く期待している、それも感じました。

2021年F1第9戦オーストリアGP表彰式 左から2位のバルテリ・ボッタス(メルセデス)、ホンダF1田辺豊治テクニカルディレクター、優勝のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、3位のランド・ノリス(マクラーレン)
2021年F1第9戦オーストリアGP表彰台 田辺豊治テクニカルディレクターとマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

■表彰台では2年前を思い出しながらも「今回はグランドスタンドを見渡す余裕もあった」

──2年前は涙のシャンパンシャワーでしたが、今回はどんな風景が見えていましたか?

田辺TD:お客さんもたくさん入っていましたし、ただグランドスタンドは以前よりは少し空いていました。それでも観客の熱狂は十二分に伝わってきました。そんな雰囲気のなか、2年前を思い出しながら表彰台に立ちました。

 前回に比べると、グランドスタンドを見渡す余裕もありました。でも感慨は深かったですね。見下ろすとみんながマックス(・フェルスタッペン)の優勝を祝っていたり、2位(バルテリ・)ボッタス、3位のノリスを祝福している光景が見えたり、それも嬉しく思いました。

──今季のパワー向上、パワーユニットの好調に関してはオイルメーカーの貢献も大きいと聞いています。

田辺TD:エクソンモービルとは密接な協力関係を築いていて、燃料、オイル双方で共同開発を続けています。今季はオイルのアップデートにもこぎつけました。改良には目的があり、パフォーマンスと信頼性の向上を目指すわけですが、今回は両分野でのレベルアップが見越せることが分かり、投入を決めました。

──次戦イギリスGPでのスプリント予選に向けて、パワーユニット側の対応はどんなものを考えていますか?

田辺TD:現行の技術レギュレーションでは、予選とレースで同じエンジンモードを使うことが決められています。イギリスではそのレギュレーションが初日の予選から導入されることになります。2日目のフリー走行2回目では再び違うモードで走れますが、午後のスプリント予選では同一モードになります。

 ですので、実質的には初日のフリー走行1回目で最適なモードを決めないといけません。これまで以上に事前シミュレーションで精度を上げることが重要になると思います。そして1回目フリー走行で迅速に最適化を進めることですね。

2021年F1第9戦オーストリアGP セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)のバトル
2021年F1第9戦オーストリアGP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
2021年F1第9戦オーストリアGP 角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)

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