【新型コロナ】高齢者のワクチン接種、1回目完了66%弱 「今月完了」の目標厳しく

 政府が5日に発表したワクチン接種の実績によると、全国の高齢者で1回目を終えた人の割合は66%弱となり、5月下旬に菅首相が宣言した「7月末までに高齢者へ接種完了」の実現が厳しくなったことが分かった。国からの必要な分のワクチン配送はすでに終わっているが、自治体では大規模接種、個別接種、職域接種の3ルートでの接種体制が同時に動いており、打ち手の確保など課題が山積しこれ以上の接種ペース向上は難しいとみられる。

目標達成には残り5日で1回目の残り約1211万回を実施する必要

 政府が公表した統計によると、4日時点で1回目の接種を終えた高齢者は全国で2336万9590人。割合にすると高齢者全体の65.86%となる。なお2回目の接種を終えた高齢者は1202万409人(33.87%)。7月末までに高齢者全員への接種完了を達成するためには、1回目の残りと、高齢者全員への2回目接種をこれから実施しなければならない。

 達成するためには、6日起点で残り26日となるので、単純計算すればこれから2回目の接種を1日90万回強、毎日実施できればよいことになる。十分可能な数値に見えるが、しかし現実的に考えれば極めて厳しい情勢と言わざるを得ない。

 なぜなら、現在主に接種されているのは3週間の接種間隔が必要なファイザー製のワクチン。最終日の7月31日に達成するとして逆算しても、7月10日までに1回目の残り約1211万回を終了させなければならない。これには7月6日から10日までの5日間で1日約242万回の接種が必須となり、これまでの接種ペースから考えると到底達成不可能な数字だ。

 さらに、これはすべての接種を高齢者のみに振り向け直すことが前提の話で、現在すでに高齢者以外、また職域での接種が始まっていることを考えるとそれも非現実的な想定となる。つまり現時点で、政府目標の達成は事実上不可能になったと捉えるのが妥当だろう。

 政府は先週、海外からのワクチン輸入のペースが落ちていることを認め、河野太郎ワクチン担当大臣が、すでに自治体に配送した在庫分を活用し「接種ペースを最適化」するよう会見で要請した。しかし「最適化」が何を指しているのか不明で、あくまで政府目標を達成するため在庫分でのペースアップを要請したのか、自治体に任せて諦めてしまったのかすら分からない状態だ。もし諦めていないのだとすれば、自治体の接種ペースを上げるための支援をすぐに強化することが喫緊に必要だろう。いずれにしろ、5月下旬の首相の「宣言」は見切り発車に過ぎず、見通しが甘かったと言われても否定できない状況だ。

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