衝撃広げた巨人の「炭谷放出」 なぜ楽天にトレード交換要員を求めなかったのか

炭谷が残した「置き土産」は…

ベテラン捕手が残した〝遺産〟とは――。巨人から楽天に電撃トレードとなった炭谷銀仁朗捕手(33)が5日に入団会見を行った。3年契約の期間中だったことだけでなく、交換要員を求めない金銭トレードだった点も衝撃を広げた。その背景にはどんな事情があったのか。結果的に支配下枠が「1減」となったことで、育成に転落した選手たちにビッグチャンスが広がっている。

前日まで普段と変わらず試合に出場し、トレードが発表されたタイミングは4日の試合中。首位阪神を猛追する中での放出、巨人との契約期間を残す中での移籍だっただけに、その衝撃は計り知れないものとなった。そしてもう一つ、巨人側が交換要員を楽天サイドに要求しなかったことも驚きを広げた。

その理由について、球界関係者は「支配下の登録人数の兼ね合いもあるのではないか」とした。支配下選手を登録できる人数の上限は70人。今季の巨人では開幕後だけでも戸田、平間、直江の3選手が育成から昇格し、68人まで迫っていた。

また、今季は東京五輪開催による中断期間があるため、補強期限は8月30日まで例年より1か月延長されている。編成面では6月下旬に新助っ人のスモークが電撃退団したことで、球団は新外国人選手の調査を続けている。チームの有事に備え、期限ギリギリまで「緊急補強枠」を空けておく必要があり、育成選手が支配下を勝ち取れるチャンスは実質的にあと1人しかいない状態だった。

しかし、炭谷の移籍で「1減」となり、支配下は67人に。育成から昇格できる枠が「2」に拡大した格好だ。スモークの退団時にフロントも「若い選手に大チャンス」と奮起を促していたが、育成卒業を目指す若手にも大チャンスとなる。

現在、巨人の育成選手は23人。その中には手術を受け、長期間のリハビリを要する理由などで〝育成落ち〟した選手も少なくない。昨年のドラフト1位右腕・堀田賢慎投手(20)や3年前のドラ1・鍬原拓也投手(25)、2019年のイースタン・リーグで首位打者に輝いた山下航汰外野手(20)らが手ぐすねを引いている。

もちろん、チャンスをつかみ取るには結果が不可欠。炭谷の電撃移籍でファームの競争がいっそう激化しそうだ。

© 株式会社東京スポーツ新聞社