田中貴に続き巨人からまたも捕手を補強 楽天石井監督、炭谷獲得の狙いとは?

楽天の入団会見に臨んだ炭谷銀仁朗【写真:(C)Rakuten Eagles】

「なるべく1人に固定したい」けれど正捕手格太田らは成長途上

楽天は5日、巨人から金銭トレードで獲得した炭谷銀仁朗捕手の入団会見を行い、同日に敵地ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦に出場選手登録。早速新しい背番号26のユニホームを着せてベンチ入りさせた。それにしても、楽天は約9か月前の昨年9月30日にも、同じ巨人から田中貴也捕手を金銭トレードで獲得したばかり。同じチームから捕手2人を立て続けに取るのは異例だが、石井一久GM兼監督の狙いはどこにあるのだろうか。

「(楽天には)若いキャッチャーが多く、僕が最年長ということになる。自分が経験してきたことを若い選手たちにどんどん伝えていって、お互いに切磋琢磨しレベルアップしてチームが強くなればと思います」

炭谷が会見でそう語ったように、楽天は今季80試合を消化した5日現在、正捕手格で今季68試合(先発59試合)に出場している太田光をはじめ、16試合出場(先発11試合)の下妻貴寛、14試合(同2試合)の田中貴、10試合(同8試合)の足立祐一の4人が1軍で捕手として起用されている。

ヤクルト現役時代に史上屈指の名捕手・古田敦也氏とバッテリーを組んだ石井監督は、現場指揮官就任当時から「なるべく捕手は1人に固定したい」と語っていたが、現有戦力はまだまだ成長途上で、物足りないところがあるようだ。

この日のロッテ戦でも、先発投手の西口が4回途中6失点でKOされると、続く5回の攻撃で先発捕手の太田に早々と代打・田中貴を送り、そのままマスクをかぶらせた。結局試合には1-8で敗れた。

西武時代には石井監督とバッテリーを組む

昨年9月に28歳の田中貴を獲得した際、石井監督(当時GM専任)は「(同年10月の)ドラフトで捕手以外に優先して補強したいポジションがある。(田中貴獲得で)別のポジションに枠を使える」と説明していた。実際、楽天はドラフトで指名した7人(育成1人を含む)中、6人を投手で占め、残り1人を内野手に回すことができた。当時、太田と足立が相次いで故障し捕手が手薄となった事情もあった。

今回は単なる“人数合わせ”ではない。東日本大震災発生からちょうど10年の節目で、半ば優勝を義務付けられた今季、現状では首位に4.5ゲーム差の4位にとどまっている。浮上のためには、プロ16年目・33歳と経験豊富な炭谷のリードが必要とされる局面があるはずだ。

さらに、3年目・24歳の太田ら若い捕手陣の手本になれる人材でもある。楽天は2018年オフ、当時DeNAコーチで名伯楽として知られていた光山英和・現バッテリー兼守備戦略コーチを招聘。長年正捕手を張ってきた嶋基宏捕手は19年オフにヤクルトへ流出したものの、捕手育成のために手を打ってきた経緯がある。8年ぶりにチームに復帰した田中将大投手も、今季全11試合で太田のバッテリーを組み、綿密にコミュニケーションを取りながら配球術の向上に一役買っているところだ。

巨人との間では、ウィーラー内野手-池田駿投手、高梨雄平投手-高田萌生投手に田中貴の件を合わせ、シーズン中だけで3件のトレードが成立。信頼関係が醸成されていたことも炭谷獲得に幸いしたと言える。

炭谷にとっても楽天は、西武時代にバッテリーを組んでいた石井監督をはじめ、渡辺直人打撃コーチ、涌井、岸、牧田、浅村ら気心の知れた元同僚が多く、溶け込みやすい環境。戦力としても若手の手本としても、機能する条件がそろっている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2