Twitter CEOや大阪なおみも!様々な分野に普及するNFTで大変革が予想される業界は?

2021年3月、Twitterの共同創設者でありCEOを務めるジャック・ドーシー氏は、最初のツイートを291万ドルで販売しました。また同年4月にはプロテニス選手の大坂なおみ氏とその姉の大坂まり氏が、6枚のカード(デジタルデータ)をオークションに出品。まり氏がなおみ氏をデザインした「大阪なおみの色」というタイトルで、サイングッズなどが付与され、落札総額は58万ドルを超えています。

上述のツイート、カードは、ともにデジタルデータです。そのデータに価値を付与したものがNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)です。今、NFTは様々な分野へ広がりを見せています。


デジタルデータが資産価値を持つ

インターネットの発展とともに、コンテンツの在り方も多様化しつつあります。最初からインターネットでの公開を目的とした、デジタルデータのみの絵画なども存在するほどです。一方でデジタルデータはコピーが容易であるため、これまでは価値を付与しにくいとされてきました。

そこで注目を集めているのがNFT(Non-Fungible Token=非代替性トークン)です。

NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、日本語では非代替性トークンと言い、ブロックチェーンを用いて、唯一性、つまりほかにはないと認められたデジタルデータそのもの、およびその認証する技術の総称です。因みにブロックチェーンは、すべての取引が記録されている分散されたデジタルの台帳のことです。

より、具体的にお話しします。デジタルデータはコピーが容易です。これはメリットであり、デメリットでもあります。デメリットの面を挙げれば、デジタルデータにオリジナルとしての価値を付与しにくいということになります。つまり蒐集する対象としては価値が低かったわけですが、このNFTを使うと、そのデメリットが解消されます。

例えば、スマホで撮った写真。データはデジタルで、スマホに記憶されています。オリジナルの写真のデータをブロックチェーンの技術を用いてNFTとし、オリジナルとしての真贋を保証するとともに、保有者を特定できます。このプロセスを通じて、これまでコレクションアイテムとなりにくかったデジタルデータに商品価値を吹き込みます。

NFTはコンテンツの在り方を変える起爆剤に

米国を中心にNFTの市場は短期間で成長を遂げており、Blockonomiによれば2020年には3.15億ドルに達したとみられています。

2020年末からは米プロバスケットボールリーグ(NBA)の選手の写真やプレイ動画が収納されたデジタルカード「NBA Top Shot」に活用されて収集・売買が活発化しています。サービス開始以来で300万回取引され、流通総額も5億ドル以上に達している模様です。2021年に入って、冒頭でお伝えしたような著名人の動きもあり、NFT市場の成長は勢いを増していると考えられます。

米国の急成長をみて、国内でも様々な企業がNFTへの参入を図っています。NFTには多様な業態が関わります。コンテンツやIPを保有する個人や企業にとどまらず、コンテンツを売買する場である取引所や、NFTの発行・取引・保管を支えるインフラや技術なども必要となるでしょう。NFTが広く普及すれば、これまでのコンテンツの在り方が大きく変わる可能性があります。

先ほどは写真を例にとりましたが、他のコンテンツについても考察してみたいと思います。

その1つが電子書籍です。いちよし経済研究所は、2026年の国内の電子書籍の市場を、2019年に比べて約3倍の9,000億円に拡大すると予想しています。メディアドゥ(3678、東証1部)は電子書籍の国内シェア40%を持つ取次最大手企業ですが、NFTをコレクションアイテム向けなどの商用利用サービスとして立ち上げつつあります。

出版取次大手のトーハンと組んで、全国のリアル書店に、NFT版限定デジタルコンテンツを付録(「デジタル付録」)とした書籍を流通させる仕組みを構築中です。NFTのマーケットプレイスと共に年内稼働に向け準備中であり、KADOKAWA(9468、東証1部)、講談社、集英社、小学館といった大手出版社も企画を検討している模様です。

次にオンラインゲームです。あるゲームで入手し、育成したキャラクターはほかのゲームでは使えない、また、あるゲームで入手したアイテムは同一アイテムなら価値が同じ、というのがこれまでの一般的な認識でした。

これが変わろうとしています。ブロックチェーンを活用したブロックチェーンゲームの登場です。ゲーム中のキャラクターやアイテムをNFTにすることで、異なるゲームの垣根を越えてキャラクターやアイテムを活躍させることができます。自分が苦労して育てたキャラクターやアイテムを継続して使える、これまではできなかったゲームの楽しみ方が広がります。

さらに音楽です。エイベックス(7860、東証1部)傘下のエイベックス・テクノロジーズは、NFT事業基盤「A trust」を提供しています。数量限定のデジタル音源およびアーティストのデジタルグッズの販売に資するのみならず、著作権管理のシステムにも応用していく方針です。

参入企業の競合も想定される一方、NFTにかかわる法制度の整備の進展とともに、関連企業の活躍は見逃せないでしょう。

<文:投資情報部 宇田川克己>

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