安保法制違憲の訴え棄却 原告敗訴相次ぐ 長崎地裁、憲法判断示さず

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判決前、横断幕を掲げて歩く原告ら=長崎市万才町、長崎地裁前

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障法制は違憲であり、平和に暮らす権利が侵害されたなどとして、長崎県内の被爆者らが国に1人当たり10万円の損害賠償を求めた訴訟で、長崎地裁(天川博義裁判長)は5日、請求を棄却する判決を言い渡した。違憲か合憲かについての判断は示さなかった。原告側は控訴する方針。
 原告は2016年に提訴し、前長崎原爆被災者協議会事務局長の山田拓民さん(結審後に死去)を含む被爆者ら191人。原告側代理人によると、全国22の裁判所に起こした集団訴訟の一つで、17例目の判決。敗訴が続いている。
 長崎地裁の判決は「裁判所は具体的事件を離れて抽象的に政府や国会の行った行為などの違憲、違法について判断する権限を有しない」とした上で、法整備によって日本が武力攻撃の対象とされたことはないと指摘。戦争が起こる危険性についても「諸情勢に基づく予測の域を出ない」として、原告の主張を「抽象的なものにとどまる」とした。
 悲惨な原爆体験を訴えた原告に対し「原子爆弾による被害を体験した原告らは、当時の被害体験を想起し多大な精神的苦痛を感じたことが認められる」と理解を示しながらも、こうした苦痛は「法的に保護された権利や法的利益に当たるとは言えない」として訴えを退けた。
 判決後、原告側弁護団は「憲法判断の回避は裁判所の職責を放棄するもの。裁判所は空疎な理論を用いて原告らの主張を排斥し、極めて不当だ。実際に戦争が始まり国民が巻き込まれてからでないと司法審査ができないと言っているに等しい」との声明を発表した。