納戸神のマリア像 初公開 世界遺産登録3年記念 案内所「かたりな」

初めて公開される納戸神。マリアとみられる像とメダイ。ふだんは木箱で保管されている=平戸市、春日集落案内所「かたりな」

 世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産、春日集落(長崎県平戸市春日町)の案内所「かたりな」で、かくれキリシタンの信仰に欠かせない納戸神など3点の特別展示が開かれている。このうち2点は約10年前、市の調査で存在が確認されていたもので、世界文化遺産登録3周年を迎えるのに合わせ、初めて公開された。8月9日まで。
 納戸神は禁教の時代、信仰儀式の主祭神で、外部からキリシタンと悟られないよう、信者宅の納戸奥などで、木箱に入れて隠すように祭られていた。
 今回、初公開されたのは同集落の美吉英次さん(60)が継承した納戸神。同市生月町でみられる保管様式とほぼ同じように、着物を模した布などにくるまれている。布の中にはメダイ(メダル)と、キリストを抱くマリアとみられる高さ数センチの像。同市によると、納戸神のマリア像は材質、制作時期などは不明。儀式では箱から取り出されることはないという。
 一緒に展示される麻紐(ひも)を組み合わせた信仰具「オテンペンシャ」は、実際に儀式に使われたもので、持ち手部分が黒ずんでいる。
 昨夏、初公開した十字の形をした集落のご神体、「オマブリ」(和紙製)も再展示している。
 美吉さんは「信仰で最も大切な納戸神を公開していいのか、自問した。集落が世界文化遺産の構成資産になり、先祖の信仰が世間で評価されたと報告できるとも思った」と展示に向けた複雑な思いを語った。
 案内所「かたりな」の関係者は「オテンペンシャは使い込んであり、迫力を感じる」と話した。
 特別展示の問い合わせは平戸市文化交流課(電0950.22.4111)。

© 株式会社長崎新聞社