妄想キャスティング⑤キム・サンホ
不器用ながらも寄り添ってくれる、人情の代名詞
コ・チャンソクにややかぶるのだが、もう少し人情寄りで見せてくれるキム・サンホも加えておきたい。彼もまたドラマに映画に大活躍の人だが、ユ・ヘジンやコ・チャンソクのような陽キャラというより、不器用に主人公に寄り添ってくれる役どころがハマる。
ソル・ギョング演じる主人公の雇い主で良き友の工場長役を演じた『ソウォン/願い』(2013)なんて、涙なくして見られない。性暴力に遭った主人公の愛娘の裁判シーンでは、我がことのように犯人に激昂し、ソル・ギョングの傍らでともに涙し、「お前にとって俺は他人なのか」と訴える。クァク・ドウォンが「悪徳」の代名詞なら(褒めてます)、キム・サンホは「人情」の代名詞でもある(『焼肉ドラゴン』(2018)は主演だったが、不器用人情キャラそのものだった)。そんな彼が、『目撃者』(2018)ではシャープな切れ者刑事を演じており、役者ってすごいな、と思わされた記憶がある。
シェアハウスでは、特徴的な髪型を事あるごとにいじられるのだが、皆の話を聞いてあげる潤滑油的存在に知らぬ間になっているような立ち位置でどうだろう。劇中設定では、密かに「ベストジーニスト」を狙っているというエピソードを入れたい(『目撃者』でのジーンズの着こなしは見事だった)。
妄想キャスティング⑥イ・ソンミン
仕事に生きる堅物男は、悪にもそっと手を差し伸べて…。
最後の1人は、迷った末、イ・ソンミンに。韓ドラファンには、「ミセン-未生-」のオ課長と言った方が早いだろうか。
彼の場合、「もはや主演俳優では?」問題がなきにしもあらずだが(なにせ『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』(2018)では、一番手のファン・ジョンミンをさしおき百想芸術大賞の最優秀演技賞を受賞しちゃっているのだから)、トメの俳優としてふさわしいだろう。仕事に生きてきた男の哀愁的なものを漂わせ、きれいな奥様とわが子の写真を財布の中に忍ばせているイメージ。
『弁護人』(2013)で演じた不正を許せぬ堅物記者役なんて、短い出番ながら「こいつ、いいヤツじゃん!」な非常にオイシイ脇役だった。なので、シェアハウスでは、悪役印象が強すぎて近所の子供たちに生卵をぶつけられたクァク・ドウォンに、「脱げ」と言って自分の上着とワイシャツを脱いで差し出すというシーンをいれることにしよう(by『弁護人』)。
TEXT:高橋尚子(編集・ライター)
Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)