「二度と水害のない真備町に」故郷に戻り防災活動に取り組む男性 岡山

西日本豪雨で被災後、岡山県倉敷市真備町を離れたものの再び真備町に戻り防災活動に取り組んでいる男性がいます。男性を突き動かすのは「もう二度とふるさとで水害を起こしたくない」という思いです。

森脇敏さん、80歳。森脇さんとの出会いは、豪雨からひと月が経った頃のことでした。

被災した自宅を案内する森脇さん(2018年9月)

(森脇敏さん)
「あそこはっきりしとるでしょ、ここまできたんです」

3年前の豪雨で見る影もない姿になった自宅……

森脇さんが長年暮らした自宅は3年前の豪雨で見る影もない姿に。家財道具も思い出の品も失い、当時避難所となっていた真備町の小学校に身を寄せていました。

真備町の小学校に身を寄せた森脇さん(2018年9月)

自宅の再建を諦め、豪雨から5カ月たった年の瀬には娘の住む福岡県へ引っ越しました。

福岡へ向かう森脇さん(2018年12月)

それでも真備町との縁は切れません。福岡県に引っ越してからも、たびたび真備町に戻り水害の歴史を住民に伝えてきました。

水害の歴史を伝える森脇さん(2019年6月)

そして今、森脇さんは妻を福岡県に残し真備町で1人で暮らしています。

(森脇敏さん)
「行ったり来たりを20回くらいやってまして、でもどうにもならんからというので。博多へ住んでたらそういう活動できませんからね」

15年ほど空き家になっていた真備町内の妻の実家が今の住まいです。

(森脇敏さん)
「つくづく博多での生活を通じて感じた、カントリーボーイはカントリーボーイなんですよ、シティーボーイにならないの。田んぼみたり山を見たり、やっぱりそれがいい」

料理も、掃除も、洗濯も全て1人でこなすようになりました。

(森脇敏さん)
「これ全部酢なんですよ。自分の元気の源だと思ってる、私は毎日食べる、酢の物好きです。1人で生活してみたら、かーちゃん(妻)のありがたみがよく分かる。われわれの年になって1人で生活というのはやっぱり寂しい」

「終止符」を打ちたい、これが一番。

6月30日、森脇さんをはじめ倉敷市真備町の岡田地区の住民らが被災後に立ち上げた「まび創成の会」の会合が開かれました。
水害の歴史を伝える伝承館の設立や防災活動に取り組んでいます。

伝承館は、災害時の防災拠点として倉敷市が2023年度をめどに整備する「復興防災公園(仮称)」のそばに作りたいとしています。

(森脇敏さん)
「これ、まだとりあえず試作なんですけど、岡田地区をテストケースで作って、真備町全体を作ろうと」

現在、森脇さんたちが岡山大学などの協力を得て進めているのがQRコード付きの真備町の防災マップの作成です。

地図上にあるQRコードを読み取ると、その場所の歴史や西日本豪雨での被害を説明する動画が流れます。
被害の記録を目に見える形で残し災害時の安全な避難に役立てます。

岡田地区の小学生たちが動画のナレーションを担当することになったそうです。

(森脇敏さん)
「われわれ年寄りじゃなしに子どもを巻き込む、将来もあるし。平成30年、2018年の水害で『終止符』を打ちたい、これが一番。私はできると思っている、そういう思いで活動している」

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