炭谷トレードで見えた巨人の「聖域破壊」 同じ複数年契約の陽岱鋼、井納の運命は

原監督の前ではFA戦士も安泰ではない

〝聖域〟破壊で巨人のFA選手に火がつくか。巨人は炭谷銀仁朗捕手(33)を楽天に金銭トレードで放出。球団初となるFA選手のトレードとなったが、何より衝撃だったのは炭谷が3年契約を半年残していたこと。もちろん本人の意思を尊重した形だが、チーム内からは「これで油断できる選手は1人もいなくなった」と、これまで以上の競争激化を歓迎する声が上がった。

通算2000試合目となった6日の中日戦(前橋)で、巨人は昨季の沢村賞左腕・1点を追う5回に沢村賞左腕の大野雄を攻略。坂本、梶谷の連打で無死一、三塁とし、失策と野選で逆転に成功したが、6回無死満塁の好機で無得点に終わり、流れが変わった。巨人先発・サンチェスが7回1失点も継投が誤算。2番手・高梨が1点リードの8回に一死も取れず2安打で同点とされると、無死一、三塁で3番手・鍵谷も勝ち越し打を許し2―3で惜敗した。

もっとも原監督はサバサバ。「向こうは3点目を取れたというところでしょうね。3点目が重かった」と振り返った。

そんななかチーム関係者は「炭谷の移籍で分かったのは、FAや生え抜きで複数年契約中の選手であっても、安泰ではないということ。油断できる選手は1人もいなくなった」とチームへの刺激を期待した。

巨人内のFA組は陽岱鋼が5年契約最終年。複数年契約は丸が5年契約3年目、梶谷が3年契約1年目、井納が2年契約1年目となる。また生え抜きでは坂本が5年契約3年目、小林が3年契約2年目となっている。

「成績が落ちてきた選手に他球団からのオファーがあり、その方が選手が活躍できると判断すれば、原監督は契約があっても動く。プロとしては当たり前だけど、結果を残し続けるしかない」(前出の関係者)

そんななかこの日は〝複数年組〟が大活躍。梶谷が大野雄からマルチ安打をマークすれば、丸も大野雄と又吉から計2安打を放ち存在感を示した。小林は攻撃で敵の野選を引き出し勝ち越しに成功すると、守備では7回一死でバント処理を強肩で併殺に仕留めた。

さらに二軍でくすぶっている井納にも変化が見えた。入団会見で指揮官から目標を「150イニング」に設定された右腕は、ここまで一軍5戦で防御率14・40、0勝1敗と苦戦している。

それでも炭谷の電撃移籍から一夜明けた5日のイースタン・楽天戦(ジャイアンツ球場)で7回2安打無失点と好投し「全球種をまんべんなく(育成の)喜多(捕手)と話し合いながら投球できました」と復活へのノロシを上げた。

丸が移籍後初の二軍落ちを経験するなど、複数年契約選手も決して油断させないのが〝原流〟だが、炭谷の移籍がより鮮明にさせた形。原監督はこの日、先発マスクで好リードと好守を見せた小林に「そうそうそう。もう、うちのリーダーだからね」と持ち上げた。電撃トレードによりチーム内の競争が高まれば、まさに指揮官の狙いどおりとなるが、果たして。

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