韓国、オンライン授業1年の「衝撃の結果」  アフターコロナへ見えてきた課題【世界から】

 世界がコロナ禍に見舞われて1年半になる。現在ではワクチン接種が進むなど、「集団免疫の獲得」や「アフターコロナ」を見越した動きもある。韓国でも学校教員への接種を進め、夏休み後の2学期からはすべての学校で、すべての学年の児童、生徒が登校での授業を受けられることを目標としている。
 オンライン化が進んでいる韓国では、この1年、登校授業の傍ら、小学校から大学までオンラインによる授業も行ってきた。海外からも注目された取り組みだったが、ここにきて思わぬ弊害や影響が出ていることが明らかになった。(釜山在住ジャーナリスト、共同通信特約=原美和子)

小学4年生のオンライン授業の様子。始業前に今日の授業内容を予告している。朝礼もズームで行われる=2021年6月、筆者撮影

 ▽称賛されたが…

 韓国では毎年3月に新年度が始まるが、昨年は2月から新型コロナウイルス感染拡大による非常事態措置が続き休校に休校が重ねられた。4月に入り、各家庭にインターネット環境やパソコン、iPadなど必要な機器があるかを調査した上で、自宅でのオンライン授業が始まった。

 4、5月はオンライン授業、6月からは1、2週間に数日の登校授業とオンライン授業の組み合わせになり、これが1年たった現在まで続いている。(組み合わせ方は生徒数の規模などにより各学校に一任されていて、既にすべての学年で毎日登校授業を行っている小規模校もある)

 ある小学生のオンライン授業の様子を見ると、まず専用サイトにログインし、学習関連動画を視聴する。そして授業ごとに教科書の指定されたページの問題を解き、授業の感想文を書く―といった課題が与えられる。各生徒の授業や課題の進行状況は教師によって管理され、授業に参加できないことがないよう配慮がされている。

 昨年春、韓国でオンライン授業が開始されたころ、日本でも全国の小中高校などが一斉休校となった。日本にいる友人や知人は、韓国であっという間にオンライン授業が始まったことを驚いていた。

ソウルの高校でオンライン授業を行う教員=2020年4月(共同)

 ▽学力試験の衝撃

 しかし、先日、政府と教育関係者に衝撃を与えるニュースが飛び込んで来た。6月3日の中央日報の報道によると、「学業成就度評価」において、基礎学力の水準に達していない生徒の比率が過去最大を記録したというのだ。

 日本の全国学力テストに当たるこのテストは、中学3年生と高校2年生を対象に国語、数学、英語について、通常は6月に行われる。昨年度は休校で学年のスタートが遅れたため11月に実施され、その結果が先日発表されたのだ。

 特に到達水準が大きく下がったのが「数学」で、中学と高校で「基礎学力に未達」の生徒の割合が13%を超えた。また、女子生徒より男子生徒、そして都市部よりも地方の生徒の学力低下が顕著だった。

 2017年の文大統領就任以降、「学業成就度評価」の結果は毎年上昇傾向にあっただけに、教育部の長官は「新型コロナの影響によって通常の学校生活に制限があったこと、これが生徒たちの学習意欲や自信を低下させ、今回の結果にもつながったと見られる」とコメント。教育部は今回の結果を重く見て、対応を検討すると発表した。

 やはり、昨年1年間の試行錯誤の中での授業運営は予想以上に影響が大きかったということだろう。特に現在の高校2年生は、高校生活のスタートからコロナ対応の影響をもろに受けた上に、もう来年度は大学受験。早急な対応が望まれる。

ソウルの高校でオンライン授業を行う教員=2020年4月(共同)

 ▽見えた限界

 1年以上、オンライン授業の様子を見てきたが、確実にバージョンアップした。教育動画は充実したし、本年度は小学校でも国語、数学、科学、社会、英語…など主要教科を中心に、教師によるズームでの授業時間が増えた。比較的年齢が高い教員も、ズームでスムーズに授業を行い、学校の連絡用アプリを難なく使いこなす。常に改善や努力を惜しまない様子には感心させられる。

 しかし、正直なところ、オンライン授業を家庭でもしっかり管理できるのは小学生までが限度ではないかと思う。

 中学生ともなると反抗期にさしかかり、保護者が管理するのは難しくなる。授業開始に起きていない、オンライン授業の画面を開きつつ携帯でゲームをしたり動画を見たり…。注意すればけんかになる。頭を抱える保護者も多かった。

 小学生の授業内容なら家庭でも何とかカバーできても、中学、高校の内容となると難しいところも多いのではないか。オンライン授業だけでは不十分という声も挙がるだろう。

 やはり、学校で直接授業を受けることは何にも勝ると痛感するが、いち早く取り組み、確実に進化したオンライン授業すべてを否定してほしくはない。この1年で築き上げた実績や良かった点を分析して、反省すべきところは反省し、今後の教育に生かしてほしいと願うところである。

韓国・水原の高校で試験的に実施されたオンライン授業の様子=2020年3月(聯合=共同)

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