わずかな油断で感染 デルタ株で入院 宮崎県内男性

医師に示されたAさんのCT画像診断報告書。COVID―19(デルタ株)の文字が見える(本人提供)

 新型コロナウイルスのうち、感染力が強いとされるインド由来の変異株「デルタ株」に感染した県内の30代男性Aさんが治療を終えて退院し、宮崎日日新聞の取材に応じた。約2週間の入院中、重症化への恐怖におびえ続けていたというAさんは「ちょっとした油断で感染する」と、最大限の警戒を訴えた。
 Aさんは6月中旬、仕事中に、2週間前までに海外渡航歴のある男性と会話した。約1分間で互いの距離は2メートルほど、2人ともマスクなしだった。
 小さい子どもと同居していることもあり、普段はコロナ対策に気を配っていたというAさん。しかし、男性が渡航前後に受けたPCR検査で陰性だったと聞いていたことで「完全に油断していた」という。
 会話の直後、男性がしきりに胸の痛みを訴えたため、車に乗せて病院に連れて行ったところ、男性はPCR検査で陽性が確認された。翌日、濃厚接触者と判断された7人が検査を受け、Aさんを含む4人も陽性となった。その日、デルタ株が疑われる患者1人が県内で初めて確認されたと県が発表。「男性がそうだったのでは」と頭をよぎった。
 翌日、入院した病院の医師から「あなたと接触した男性がデルタ株だから、あなたもそうでしょう」と告げられた。病院では男性と、一緒に陽性が告げられた他の3人も治療を受けた。うち2人は激しくせき込み、嘔吐(おうと)を繰り返すなど重症化していた。「自分もいつ症状が出るのかと、気が気ではなかった。食事のたびに、味覚に異常がないことを確認して感謝した」
 そして症状が出ないまま13日間で退院した。「PCR検査を受けていなかったら、自分が感染していると思いもしなかっただろう」とAさん。無症状のデルタ株感染者が今後、県内で感染を広げないか懸念する。
 Aさんは「ほんの少しの会話で感染するデルタ株の感染力は想像以上。今は沈静化している県内だが、少しも油断はできない」と呼び掛け。「感染すると(心ないことも)いろいろ言われるが、気にせず前向きに治療に専念してほしい。未知のウイルスにマスクとフェースシールドだけで立ち向かっている医療関係者には、感謝しかない」と強調した。

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