<高校野球東京大会>大けが乗り越え…仲間と目指す甲子園 穎明館高校

TOKYO MX「news TOKYO FLAG」では、夏の高校野球東京大会の注目校や注目選手を紹介しています。今回は、野球を続けられなくなる危機を乗り越えた1人の選手にスポットを当てました。

八王子市にある穎明館高校の1年生・森哲太選手は、かつて野球を断念しかけた出来事がありました。練習試合中に右脳=頭の右側に硬球が当たってしまったのです。病院に運ばれ精密検査を受けましたが、診断結果は「日常生活もリスクがある。野球をやるかは自己判断で。でもあまりお勧めできない」というものでした。

手術こそせずに済んだものの脳内出血の大けがで、およそ1週間入院している間、このまま野球を続けるべきかどうか考えていたといいます。森君が悩んだ末に出した結論は「監督や家族、チームメートが励ましてくれたので、野球のプレ―で恩返ししたいと思った」と、野球を続けると決めたのです。しかし、大けがの記憶はどうしても付きまといます。

不安を抱えながらグラウンドに戻ってきた森君を待っていたのは「戻ってきてくれてありがとう」とか「これからもよろしく」といったチームメートの優しい言葉でした。星潤人主将(3年)は「どうしてもボールを怖がってしまうと思うので、まずは自分ができる範囲で、自分がやりたいと思う範囲でやってくれればいいと話しました」と振り返ります。

仲間たちの気遣いがボールに向かっていく勇気を与えてくれました。「ボールが怖くないと言えばうそになる」と話す森君ですが、仲間たちと一緒に戦いたいという気持ちが恐怖心に打ち勝ちました。いま、厳しい練習の中でも時折笑顔が見られます。

そんな森君の将来の夢は、自分がけがをした時にもらった優しさを今度は他の人に返してあげることだといいます。森君は「人の役に立つような仕事をできたらいいなと思っています」と語ります。

野球を続けさせてくれた親や監督への一番の恩返しは1試合でも多く勝つこと──。けがにも恐怖心にも勝った森くんがベンチ入りする穎明館高校は、12日に上水高校と初戦を迎えます。

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